一級フラグ建築士①伊達真、柄本医師
①
伊達真はバーのカウンターで写真を数枚広げ、桐生に情報を提供していた。
「伊達さん、この男はどんな奴なんだ?」
桐生が指差した先には、スキンヘッドの男が写っていた。この男は伊達にとって昔から知っている存在だ。
伊達は交番勤務していた若い頃まで記憶を張り巡らせ、神田の半生を思い出していた。
神田は物心ついた頃から嵐の中にいた。
辺り一面に響く怒号と暴力、飛び交う食器や酒瓶、そして家具。
神田少年は体を丸め、じっとその場を耐えながら荒れくるう大人たちを見つめていた。
幼い頃は女の人が暴れる男から庇ってくれていたため、何も被害はなかった。
しかし小学校に上がって5年経つとその人もいなくなり、男の暴力の標的は神田少年へ向いた。
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