円戯(えんぎ)月が帰ってきた。
一振り目の月は今、一振り目の極の自分、山姥切国広にしっかり怒られている。
月食の夜、三日月宗近の本霊から賜った二振り目の月は、今、国広の前にいた。
「何も、言わぬのか?」
少し困った顔をして月が訪ねてくる。
「何を言えと?」
そう返せば、月は曖昧な笑みを浮かべた。
彼らが帰城したのは確か、昼を過ぎた頃だったがなんだかんだと慌ただしくて、今は日が暮れ初めている。
夕暮れが差し込む自分達の部屋はそろそろ明かりを部屋に灯すべきか、まだ早いかと悩むような頃合いだった。
「あんたも俺に怒られたいのか?」
そう聞いたものの、自分はこの刀を怒る立場ではない。
一振り目達のように伴侶というわけでもなく、ただ、二振り目の三日月宗近を本霊から賜った日に鍛刀されたのが国広だっただけだ。
2300