「フロイド、好きです」
告白と共にフロイドの眼前に差し出されたのはとれたての大きな魚だった。
「くれんの?」
「はい、召し上がってください」
「え〜」
稚魚ながら、何となく簡単に受け取ってはいけない気配を察知したフロイドがジェイドの顔をちらりと見遣った。
「好きってなに?」
「フロイドのことが好きなんです。番になってください」
「ええ〜……」
早い段階で番になる種類の人魚は確かにいる。甲殻類なんかに多くて、雌がまだ幼い内に番って、雄は雌を守りながら大きくなるのを待つらしい。しかしウツボはこの限りではない。
「……やだあ」
「嫌なんですか?!」
ショックを隠しきれないと言った顔のジェイドが珍しく大声を出した。対して振ったフロイドは尾鰭を器用に曲げて、人間で言うところの膝を抱えるようなポーズをとった。
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