Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    aokiss2481

    @aokiss2481

    Xには載せられないR指定ものなどを好きにポイポイしております〜!!😉💕

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 9

    aokiss2481

    ☆quiet follow

    またまたはなさん【@ faishu_】の素敵イラストを元に、ワンライのネタを絡めつつお話を書かせていただきました🥰💕

    お題:テレビ・悪夢・教会
    イラスト元: https://x.com/faishu_/status/1786231345452380222?s=46&t=YJq-RQJOaYczvhSh3r8wWw

    悪夢はもう飽きた『最近さ、よく夢を見るんだ』

    二人きりの静かなゲストルームに、やっと口を開いた都々丸の言葉はよく響いた。

    遠距離恋愛でフラれた彼女との復縁を果たし、正式にシュピッツと彼女が生涯のパートナーとなる晴れの日。照れ臭そうに報告するシュピッツに祝福の言葉をかけ、彼からの招待を受けたロンと都々丸は二人の結婚式に参列していた。イギリスの格調高い教会で執り行われる結婚式には、かつてBLUEで出会ったシュピッツの生徒たちも参列している。少し前まで懐かしい顔ぶれとの再会に頬を綻ばせていた都々丸の様子がおかしいと感じたのは、厳かな雰囲気の中で交わされた二人の誓いのキスの後のことだ。式を終えて外に出ていく人々の中、心ここに在らずという表情で地面を見つめたまま動かない都々丸の名を呼べば、我に返って弾かれたように顔を上げた都々丸は「ごめん、大丈夫」といつものように笑ってみせた。そんな都々丸の手を引き有無を言わさず連れてきたのは、スタッフに声を掛けて案内された誰もいないゲストルームだ。

    「何かあったのか?体調でも悪い?」

    「そんなに心配しなくたって、大丈夫だってば」

    「僕は『大丈夫か』なんて一言も聞いてないよ、トト」

    「──ッ‼︎」

    「なのに返事としてその言葉が出てくるのは不自然だ。『大丈夫だ』って、自分に言い聞かせなきゃならないことでもあるのかい?」

    「……ほんと、お前に隠し事はできないな」

    備え付けのソファに座らされた都々丸は、やや強引なロンに眉を顰めて同じ言葉を口にする。しかしロンからの鋭い指摘に言葉を詰まらせると、降参だとでも言うように苦々しく笑みを溢した。それから少しの間を置いて、時間をかけて、紡がれたのが冒頭の台詞だ。

    「夢?夢って…寝ている時に見る夢のことかい?」

    「うん。しかも俺にとっては結構しんどい、悪い夢」

    頻繁に悪夢を見るのだと語る都々丸の目の下には、確かに薄く隈が出来ている。それに気が付いていない訳ではなかった。実際に何度か指摘もしたのだ。しかしその度に「徹夜明けでさ」と緩く笑う都々丸に、刑事という仕事柄、そこまで珍しくもないことかとロンも深く追求はしなかった。自分の浅はかな思考が、誰よりも大切な恋人が連日の悪夢で疲弊し目の前で弱々しく笑っている今の状況を作り出している。その事実を悔やんだところで、後悔は先に立って教えてくれる訳もなかった。

    「夢の中で、俺はロンと既に別れてて…探偵として有名人になったロンが結婚するのを、テレビの報道で知ることになるんだ」

    「──ッ‼︎そんなこと、」

    「分かってる。本当にそうなるだなんて考えてないよ、ただの夢だ。でも、テレビの前で立ち尽くしてる感覚がやけに鮮明で…」

    「………」

    「俺じゃない誰かと幸せになるお前のことを、手の届かないテレビの外側から見てることしかできなくて…それが結婚式に来たら余計にリアルに感じちゃって、少しブルーになってただけなんだ」

    悪夢の内容を語る都々丸の口調は淡々としたものだった。泣くでも怯えるでもない、顔色一つも変えやしない。まるでいつか本当にその時が来てもいいように、普段から備えているかのような。思わず声を上げたロンを諭す都々丸は、口では否定をしていても、その声に滲む諦観までは隠しきれていない。無数に分岐する未来の中に二人が別れなければならない未来があったとして、最悪のその道に進んでしまった時。きっと都々丸は縋ってはくれない。きっと優しすぎる都々丸は、自分が枷になるとでも思ってロンの手を離してしまうのだろう。弱々しい笑顔から、顰められた眉から、引き結ばれた唇から。嫌でもそれが分かってしまい、聡すぎるのも考えものだなとロンは表情を歪めた。

    「トト…」

    「本当にごめんな、せっかくの祝いの場なのに」

    「謝る必要なんてないよ。そんなあり得ない夢のことなんて、気にするな」

    「ありがとう、ロン。もう大丈夫。ほら、次はブーケトスだろ。俺たちも見に行こうよ」

    無論、ロンには都々丸を手放す気など更々ない。しかし、あり得るかもしれない未来に表情を曇らせる今の都々丸相手では、どんな言葉も軽くなってしまう気がして。そんな都々丸を安心させられるだけの言葉が見つからず、普段は饒舌に推理を語る唇からはありきたりな言葉しか出てこない。肝心な時に限って使い物にならない口を噤むと、ロンは言葉の代わりに都々丸の手に自らの手を重ねた。少しでも都々丸を想うロンの熱が伝わるように、と。不甲斐なさから無意識に眉を下げるロンを気遣ってか、都々丸はいつもの笑みを作って徐に立ち上がると、重ねられたままの手を引いて外へと歩き出した。

    *****

    教会の外には晴れの日に相応しい雲一つない青空が広がっていた。シュピッツとその花嫁が身に纏う、日の光を浴びた純白は青空によく映える。

    誰が次の花嫁だと黄色い声を上げて騒ぐ女性達から少し後ろ、男性参列客たちの最前列にいるロンと都々丸を見つけたシュピッツは、幸せそうな笑顔を浮かべて手を振ってみせた。千切れんばかりに振られる尻尾が見える気がするが、恐らく幻覚だ。疲れているのだろう。そんなことを考えつつ、都々丸はシュピッツに向けていた視線をブーケトスの場に移した。

花嫁の手に握られた彩り豊かなブーケは、これから次の幸せ者の手へと渡るのだろう。

    「女性陣は随分と気合いが入っているね」

    「そりゃあ、ブーケを受け取れたら次の花嫁になれるんだもんな。気合いも入るよ」

    花嫁が手にするブーケを今か今かと待ち侘びる女性たちを前にして、思わず浮かんだロンの感想に苦笑する。誰だって幸せになりたいのは同じことで、そこには性別なんて関係ない。かく言う都々丸だって、隣に立つ男と最後まで添い遂げて幸せになりたいと心の底から願っている。

    ただそれを実現させるには、あまりにも障害が多すぎるのだ。性別だけではない。これから探偵として世界を飛び回るロンにとって、都々丸は重荷にしかならない。無理やりに添い遂げたとしても、子を成すこともできない体では優秀なロンの遺伝子をこの世に残すこともできない。ロンを幸せに出来るのは都々丸ではないのだ。それを分かっているくせに、未だに繋いだままの手を、自分から離しはしない。最近よく見る悪夢はきっと、そんな都々丸の深層心理の表れなのだろう。

    (いっそのこと、ロンの方から手放してくれたら楽なのにな)

    シュピッツたちとは違い、まだまだ気安く公にするのは憚られるロンと都々丸の関係は、教会で祝福されることはない。日の目を見ることなどない関係を、夜を越えられない関係を、終わりにしてしまえればこの悪夢は消えるのだろうか。

    「次の花嫁、ね…」

    「あぁ。だから皆、あんなに気合い入ってるんだろうな」

    そんな祝いの場に似つかわしくない仄暗い思考は、ロンがポツリと溢した言葉で現実に引き戻された。都々丸の返事を聞いているのか、いないのか。ロンは顎に手を当ててふむ、と考え込む素振りをみせると、何かを閃いたようにニッと笑う。

    「それ、花婿にも有効だと思う?」

    「へ?え、ちょ…っ、ロン⁉︎」

    ロンの言葉と花嫁のブーケが空に向かって放られたのは、ほとんど同時だった。都々丸の言葉を聞かずに走り出したロンは、花嫁の後ろで待ち構えていた女性たちを飛び越えて飛んできたブーケを何なく片手でキャッチする。ブーケに選ばれなかった女性たちは落胆の表情を浮かべたものの、振り返った先でブーケを手にして笑うイケメンの姿を見つけると、皆一様に頬を染めて色めき立っていた。そんな女性たちに対して、ロンは「失礼、僕も欲しかったんだ」と好青年らしい笑みを浮かべて流暢な英語で詫びると、都々丸のもとへと歩を進める。

    「ロン…?どうしたんだよ、お前。そんなにブーケが欲しかったの…?」

    「まぁね。ちょっと付いて来てくれ、トト」

    「は…?えっ、何⁉︎どこ行くんだよ⁉︎」

    「ここは人が多すぎる。僕はいいけど、君はたぶん嫌がるだろ」

    ブーケに選ばれたイケメンの動向を、周りは固唾を飲んで見守っていた。女性陣は特に穴が開くほど凝視している。そんなギャラリーのことなど眼中にないロンは悠然とした足取りで都々丸の前まで歩いてくると、困惑する都々丸の手を引きその場から連れ出した。

    *****

    ロンに手を引かれるままやって来たのは、教会に備わる庭園だった。複数の花を組み合わせて造られた景色は壮観で、天に向かって堂々と咲き誇る花々に目を奪われる。色も形も違うけれど、彩り豊かなそれは見ているだけで心が躍るものだ。

    「この辺でいいか」

    「お前なぁ…‼︎まだ結婚式の途中なのに…‼︎」

    「さて、トト。さっきの話、覚えてるかい?」

    「聞けよ!というか、え?さっきの話…?」

    「ほら、話してただろ?ブーケの話だよ」

    「あぁ、受け取った人が次の花嫁ってやつ?」

    「そう、それだ」

    「覚えてるけど…あ、そう言えば直前に何か言ってたろ。あれ、結局何だったんだよ」

    「それを今から伝えるよ」

    庭園の中央まで都々丸を連れてきたロンは、そこでようやく手を離す。花々に囲まれたその場で徐に切り出されたのは、ブーケトスの前に話していた内容だった。大して時間は経っていないのだから、覚えているに決まっている。もっとも、ブーケトスの直前にロンが溢した質問の意味は全くと言っていいほど分からないのだが。そう思い至った都々丸は式の途中で攫った張本人に答えを貰うべく、ロンにジトリと視線を向ける。一方のロンもそのつもりだったらしく、嗜めるように小さく笑うと咳払いをした。その表情にいつものような余裕さはなく、どこか緊張しているようにも見える。

    「さて。もしもトトが言ってた『次の花嫁』が花婿にも有効なら、次の花婿はこの僕だ。それでね?トト──」

    語り出したロンの声音はいつになく真剣で、茶化した雰囲気は一切感じられない。つられて姿勢を正す都々丸に、言葉を区切ったロンは一つ大きく深呼吸をする。それから続く言葉を口にした。

    「その相手は、君がいい」

    「ッ、ロン──」

    「僕と一緒に生きてほしいんだ、トト」

    そう告げて、ロンは手にしていたブーケを都々丸に向かって差し出した。ロンの名前を呼ぶ声は震えてしまい、弱々しくて情けないものになる。抑えようとしても漏れ出てしまう止まらない嗚咽と涙の治め方も分からないまま、都々丸は差し出されたブーケを受け取った。

    「返事が欲しいな、君の言葉で」

    「──ッ本当、バカじゃないのかお前…‼︎」

    「まさかこの流れで罵られるとは思わなかった」

    「だって…ッ、お前は探偵で、これからどんどん有名になって…‼︎」

    「それは否定しないけど」

    「悔しいけどカッコいいし…相手なんて選び放題なのに…‼︎なのに、本当に俺でいいの──?」

    「逆だよ、トトじゃなきゃ嫌なんだ。言葉じゃ足りないから行動で示そうと思ってね」

    「…ッ、プロポーズなんかしちゃったら、もう本当に戻れないんだぞ」

    「ご心配どうも。だが、それは僕の台詞だよ。君を逃がさないためでもあるんだからね」

    ──それでも、本当にいいのかい?

    流れていく涙を手の甲で拭えば、心底愛おしそうに都々丸を見つめるロンの視線と交わる。普段はやや引くほどに自信過剰なくせに、都々丸を伺い見る碧い瞳は不安でユラユラと揺れていた。都々丸を逃がさないためだなんて宣いながら、言葉にしたプロポーズはまるで祈るようで。その強い語気とは正反対な、不安を隠しきれていない弱い表情に思わず惚けてしまう。

    (そっか、俺──)

    (最近ロンのこと、ちゃんと見れてなかったかもしれない)

    探偵免許を取得してからは、どうにもロンの肩書きばかりに目を向けてしまっていた。BLUE史上最高のスペックを誇る天才。頭脳明晰なだけではなく、悔しいほどに整った容姿はモデル業界でだって十分に食べていけるレベルだろう。並べた文字だけを見れば、テレビの中でしか会えないような存在だ。

    そんな男に、自分は釣り合わないと思っていた。相応しくないと思っていた。

    けれど今、目の前にいるのは初めてのプロポーズに緊張する、ただの年下の恋人だ。

    BLUE最高峰の天才的な探偵なんかじゃない。推理と黒蜜が好きで、都々丸のことが大好きで、自分を信じるのが下手くそで、だからこそ隣で支えてやりたいと思った唯一無二の愛した人だ。

    「ごめん、ロン」

    「そんな──‼︎嫌だ‼︎トトじゃなきゃ僕は…‼︎」

    「あ、違う!そっちじゃなくて」

    「……言葉には気を付けてくれ、危うく攫うところだった」

    「普通に犯罪だからやめろよ。そうじゃなくてさ…俺、勝手にお前に相応しくないって、一歩引いちゃってた」

    「…全くだよ。僕が選んだ人なんだ、もっと自信を持ってくれ」

    「うん、ごめん」

    「ごめんじゃなくて、もっと相応しい言葉があるだろう?」

    「……ありがとう」

    「どういたしまして。それで、そろそろ返事が欲しいんだけど?」

    都々丸の謝罪を拒否だと受け取ったロンの不穏な呟きにツッコミを入れつつも、正直に胸中を打ち明ければロンは肩を竦めてみせる。まったく耳が痛い話だ。それから反省もそこそこにロンから促されたことで、都々丸は先ほどのプロポーズの返事をしていなかったことを思い出す。

    「俺がいないとお前、あっという間に犯罪者になっちゃうからな」

    「──!言うじゃないか」

    「ロン、俺も同じ気持ちだよ。隣にいたい、お前と一緒に生きていきたい」

    一呼吸を置いて返したのは、天文台で初めて隣にいることを誓った日の言葉だった。それを覚えていたのか、一瞬だけ目を丸くしたロンは次いで小さく笑うと、あの日と同じ言葉を返す。そうして手に入れた愛おしい人を、力強く抱きしめた。

    「あ、なぁロン。あれやろうよ」

    「あれ?」

    「せっかく教会にいるんだし。何だっけ?ほら。健やかなる時も、病める時も…ん?病める時も…あれ、病める時も…?」

    「病んでばっかりだな」

    抱きしめられたまま幸せそうに笑う都々丸は、顔を離すと少し高い位置にあるロンの瞳を覗き込む。唐突に提案された誓いの儀式の言葉はあやふやで、ロンは苦笑しながら代打を引き受けた。

    「新郎、一色都々丸」

    「ふふ、はい」

    「あなたは健やかなる時も、病める時も。喜びの時も、悲しみの時も。富める時も、貧しい時も。燃え盛るオーベルジュの中でも、陰謀渦巻く海の上でも」

    「なんか増えてない?」

    「間違ってはいないだろ?」

    心地よく響く低音が紡ぐ誓いの言葉には、少しのオリジナリティーが加えられていた。首を傾げて尋ねる都々丸に、ロンも同じく首を傾げて言い返す。神様の前で誓うには少々アグレッシブすぎる気もするが、例え火の中水の中を地でいく二人には似合っているのかもしれないな、なんて。都々丸は自分に言い聞かせて次の台詞を待つ。

    
「これを愛し敬い、慰め合い、共に助け合い…その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」

    「誓います」

    「僕も、君に誓うよ」

    二人だけの誓いを終えると、どちらからともなく唇を重ね合わせた。ロンの隣で生きていく。そう覚悟を決めた今、この晴れた青空のように清々しい気分だった。

    きっと悪夢はもう見ない。

    「はぁー…これでもうテレビの夢は見ずに済むかな」

    「分からないよ。また見る日もあるかもしれないじゃないか」

    「嫌なこと言うなよな…」

    「だが安心しろ、たぶんその時は悪夢じゃないよ。テレビの夢と言っても、見る側か見られる側かでもだいぶ内容が違うからね」

    「何だそれ、どんな夢だよ」

    そんなことを考えながらシュピッツたちの式へ戻る道中でポツリと溢した言葉を、ロンは悪戯っぽく笑いながら否定する。確かにこの先、順風満帆とはいかないかもしれない。しかしそうバッサリと否定されれば憂鬱な気分にもなるもので。そんな都々丸とは対照的に上機嫌なロンに、これから見ることになるかもしれない夢の内容を尋ねれば、ロンは鼻歌混じりに言葉を返すのだった。

    「夫婦探偵としてテレビの取材を受ける夢だよ」
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    aokiss2481

    DONEまたまたはなさん【@ faishu_】の素敵イラストを元に、ワンライのネタを絡めつつお話を書かせていただきました🥰💕

    お題:テレビ・悪夢・教会
    イラスト元: https://x.com/faishu_/status/1786231345452380222?s=46&t=YJq-RQJOaYczvhSh3r8wWw
    悪夢はもう飽きた『最近さ、よく夢を見るんだ』

    二人きりの静かなゲストルームに、やっと口を開いた都々丸の言葉はよく響いた。

    遠距離恋愛でフラれた彼女との復縁を果たし、正式にシュピッツと彼女が生涯のパートナーとなる晴れの日。照れ臭そうに報告するシュピッツに祝福の言葉をかけ、彼からの招待を受けたロンと都々丸は二人の結婚式に参列していた。イギリスの格調高い教会で執り行われる結婚式には、かつてBLUEで出会ったシュピッツの生徒たちも参列している。少し前まで懐かしい顔ぶれとの再会に頬を綻ばせていた都々丸の様子がおかしいと感じたのは、厳かな雰囲気の中で交わされた二人の誓いのキスの後のことだ。式を終えて外に出ていく人々の中、心ここに在らずという表情で地面を見つめたまま動かない都々丸の名を呼べば、我に返って弾かれたように顔を上げた都々丸は「ごめん、大丈夫」といつものように笑ってみせた。そんな都々丸の手を引き有無を言わさず連れてきたのは、スタッフに声を掛けて案内された誰もいないゲストルームだ。
    6638

    recommended works