選ぶのはただ一人恋人、カップル、果ては夫婦探偵。
二人を見ている人々が口にする言葉に対して呆れながら、時には苦笑混じりに。時と場合によって表情を使い分けながら、けれど返す言葉は決まって否定の言葉だった。初めこそ特に何を思うこともなかったのに、幾度となく間違われてきた関係性を否定する言葉を口にするのが辛くなったのはいつからだっただろうか。もう、覚えてなんかいないけれど。
(あぁ──俺、ロンのことが好きなんだな)
管理人室の扉が開かれたあの日からロンの相棒として、文字通りに死線まで潜り抜けて隣に立ち続けてきた。そんな日常の中で見せる子どものような表情や、かと思えば謎を前にした見せる凛々しい笑みに高鳴る鼓動の正体は、恋という感情にストンと落ち着いた。
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