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    ゴンサン=カッショクスキー

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    謎の現パロのオシュロル

    芋には勝てない「家に帰りたくないんだ。そっちに行くから、どこでもいい、ロルフの好きなところへ連れて行ってよ」
     きっかけは何だったか。気が付けばロルフの住む町の駅に下りて彼に連絡を入れていた。いや気が付けばなんてもんじゃない。だって、ロルフの家の最寄り駅は各駅停車しか止まらないから途中で乗り換えなくちゃいけないし、現代人としては異様な早寝習慣をしているロルフがまだ起きていてショ-トメールを確認できる時間帯に行動している。そう、まだ日は沈みきっていなくて、思い悩んで飛び出したというにはオーシュは冷静すぎた。きっとロルフなら来いと言ってくれる。そう確信して1時間に1本しかないバスに乗り、返信を待っている。案の定、ロルフから何時くらいにくるかという内容の返事が来たので予めスクリーンショットを撮っていた乗換案内アプリの画像を添付してやる。
    (帰れって言われたらどうするつもりだったんだろう)
     降車ボタンを押しながらオーシュは自分に呆れる。そんなのちっとも考慮していない。重ねて言うがロルフの家までは面倒な乗り継ぎがあるし、もっと言えばロルフが休みで荒れ仕事の日であれ確実に連絡が取れる時間帯を狙って連絡を入れている。仕事の日ならおよそ退勤してスマホに電源を入れた頃……まるでストーカーだ。彼の勤めている企業を就職サイトから探し出し、それとなく画面を見せ本人の口から勤務時間や休日はカレンダー通りなど全て聞き出した。予想では今日は休みだが、仮に仕事の日だとしても彼は残業をほとんどしないし、まして繫忙期でもない。8歳差。まだ学生のオーシュが劣情を向けているなどロルフは露ほども思っていないだろう。成人こそしてはいるがロルフの感覚ではまだ未成年。そんな年齢だから、ロルフはきっと冷たく見放すようなことはできないはずだ。
     バスを下りベンチに座って待っているとほどなくしてロルフがやってくる。少しばかり意味深な文面に心配しているようだった。……これも計算済みだ。
    「どうしたんだ、急に。何かあったのか」
    「別に。ただなんとなくお前の顔が見たくなったんだ」
    「…それでわざわざこんなところに?」
     オーシュが頷くとロルフは少し考えているようだった。帰らせるべきか否か、ロルフの選択肢は至ってシンプルだ。
    「ねえ、どこか連れて行ってよ。迷惑ならどこか満喫にでも泊まるから」
    「まんきつ?・・・ああ。いや、この辺りにはないぞ」
     知っている。というか、あったとしてもそんなところには行ったことがない。ましてホテルなんかもないから、さりげなく家に上がり込もうとしていることに気づくだろうか。
    「…俺のいきたいところ、か」
     ロルフは考えている。事前にこの辺りは地図アプリで調べたが、急にふらっときた自分を連れて行くような場所は思い浮かばないだろう。散々迷ったところでオーシュがさりげなく家に行ってもいいかたずね、ロルフは了承するのだ。
    「分かった、ついてこい」
     ところが、ロルフが歩き出したのはいえと反対側の道だった。
     
     い~しや~~~~きいも~~~おいも~~~~~~♪
     聞き取りづらいスピーカーから普通のおじさんの歌が流れてくる。美味しい、美味しい、石焼き芋。わらびもちもいかが?わらび~もち~……。石焼き芋一筋じゃないのかよ、と心の中でオーシュはツッコミを入れながら先を歩くロルフが目指す軽トラを見る。キッチンカーじゃない。現実に存在するのは初めて見た。完全に計算外だった。
    「お、ロルフ君やないか。この辺で会うん珍しいな。もうちょいしたら家の方まで行ってるのに」
    「今の時間ならこの辺りにると思ったので」
    「よう知っとるやん。腹減って待たれへんかったんか?ほっそいのによう食うわ」
     謎のおじさんがロルフの腹を軽くたたく。ちょっと待てよ、僕ですらまだ触ったことないんだぞ???オーシュは殴られたような衝撃を受けた。ロルフも嫌がる様子はなく、何なら少し笑ってさえいる。ちょっと誰よそのおじさん。何でそんなに距離が近いの。何でそんな喋り方なの。今すぐ腕を掴んで聞いてやりたい衝動に駆られたが、謎のおじさんがオーシュに気づき会釈したのでつい踏みとどまった。こんな怪しいおじさんより不審な行動をするわけにはいかない。
    「珍しいな、ロルフ君が友達連れてくんの。友達やんな?」
    「ええ。こいつに食わせたくて」
    「焼き芋なんてコンビニでも買えるやんか!」
     お前がそれを言うのかよ。完全に蚊帳の外のオーシュは必死で耐える。ロルフはロルフでポケットから財布とくちゃくちゃのレジ袋を取り出しながら注文をするし、おじさんも慣れた様子で紙袋に入れた焼き芋をロルフの穴の開いたレジ袋に入れていく。「これも持っていき、友達と食べや」と頼んでもないわらび餅を入れトラックの座席からみかんを取り出し袋に詰めていく。アツアツの焼き芋と他の物を一緒に入れるなんて・・・というか袋の底にきな粉こぼれてるよね?いいのそれ?みかんは売り物じゃないよね?などとオーシュはあくまで心の中でツッコミを入れながらやりとりを眺めていた。二人の世界に入っていくのは無理だ・・・謎の敗北感がオーシュの心を重くする。だって、なによりもロルフが見たことのない朗らかな顔をしている。無論、自分と雑談をしている時のロルフも他の人と話すよりずっと柔らかい表情をしている。けれど、今目の前にいるロルフはそれとは違う。離れているのはほんの1歩にも満たない距離なのに隔たりを感じた。
    「オーシュ、待たせたな」
     すっかり黙り込んでしまったオーシュにロルフが嬉しそうにエコバック(レジ袋)の中を見せる。赤い目がわずかに輝いていて、なんだか癪だ。
    「冷める前に家に帰るぞ」
    「えっ」

    「ほら、早く。こっちだ」
     オーシュが戸惑っていることを気にせず、もしくは気付かず、ロルフは歩き出した。慌てて追うオーシュの後ろからおじさんの「冷めても美味いけどな」と笑う声がする。ガサガサとエコバッグ(レジ袋)が音を立てる。
     ロルフが家に上げるのは予想通りだ。予想通りなのである。しかし気持ちが追いつかない。さっきまでオーシュは焼き芋屋のおじさんに敗北していたのだ。僕の方が先に好きだったのに、ロルフはあんな顔を向けるんだ…とかなんとか考えて、この後どうやって言い訳して家に帰るかまで考えていた。それなのにロルフは、ロルフときたら簡単にオーシュを裏切る。恋人じゃない、家族でもない。これは友だちだからだと高鳴る胸に言い聞かせる。気持ちが追いつかなくて顔が熱くなる。
    「少し歩くのが早かったか?」
     ふと振り返ったロルフがオーシュが隣に並ぶまで歩く速度を落とした。顔が赤い理由を勘違いしてくれたらしい。すぐそこだ、とロルフが呟く。
    「袋の中、粉まみれなんじゃないの」
    「かもしれんな」
     ここで、手を繋いだら困るだろうか。などと考えながらロルフの住む自分たちより遥かに長い築年数のアパートに着く。間取りや家賃も事前に賃貸サイトで調査済だ。
     ガチャリ。とロルフがドアを開ける。
    「鍵は?」
    「? 普段はそこの鉢の裏側に置いているが」
    「いや、鍵かけろよ。不用心だな」
    「別に何も盗るようなものなんてないからな」
     何を言っているんだか、と言わんばかりにロルフは首を傾げる。お前の目の前にいるのはストーカーまがいの男だぞ、とオーシュは心の中で毒づく。今まで聞かなくてよかった、知っていたらロルフの勤務中に家の中に忍び込んで何か色々悪いことをしていたかもしれない。
     きっとロルフはオンボロアパートで、本人みたいに地味で味気ない家具を置いて暮らしているのだろうとは思っていたが、あまりにも予想通りだった。長年使って細かい傷のついた四角いこたつにオーシュを座らせると入り口近くのキッチンに袋を置き、焼き芋を渡してくる。先に手を洗わせろよ、と内心文句を言いつつロルフが横に座りテレビをつける。とことん色気のない男だと思った。
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