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    ゴンサン=カッショクスキー

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    POIPOI 117

    ギャメセレのようななにか

    脅迫「では、私はこれからあなたを脅迫します」
     どこの世界に宣言してから脅迫する娘がいるだろうか。それは目の前の娘である。かつて救いの手を差し伸べてくれたグリフォン乗りのお嬢さん…名はセレスト。彼女は痩せこけたギャメルの手を優しく握っている。彼女がその気になれば二度と使い物にならないくらいに骨と皮だけの手はグシャグシャに砕けるだろう。これはあくまで戦場での経験による憶測でしかないが、体格が同じくらいなら見た目に寄らず女の方が強いのだ。背丈は同じくらい、ただでさえ見た目にも彼女の方が肉付きがいい。そんなことはどうでもよくて…
     ギャメルは妹に回復の兆しが見えてきて以来、それまでのストレスと無茶が祟って体を壊してしまった。あれほど身軽に動けていたのが嘘のように身体は実際の体重とは裏腹に重く、力が入らなくなっていた。盗賊団にいた頃は食欲がなくても何かは口にねじ込んでいた。働ける身体でなければいけなかったからだ。けれど今はどうだ。妹はすっかり出歩けるまでに回復した。顔色も悪くない。きっとこれからはよくなるばかりだ。解放軍がゼノイラ軍を倒してくれたおかげで心配ごともめっきり減った。逆恨みするような連中もついでにやっつけてくれたのだ。ありがたい話である。
     要は、緊張の糸が切れてしまったのだ。罪は全部自分が被ればいいと言ったように全ての災いがギャメルに降りかかった。妹が良くなるのと反比例してギャメルは日に日に悪くなった。甘ちゃんの親御さんはやっぱり甘ちゃんで、ギャメルをすぐに療養させた。兄妹仲良く並んでベッドに寝かされているのはなかなか面白かったが今はギャメル一人である。そんな時にセレストが再び現れた。妹に連れられギャメルを見た時は驚いたが、すぐにあの時のようにギャメルに優しい目を向けた。
    「神様ってのは見てるんだな。俺のダチは天使をトリ呼びしてたんだけどよ、バチが当たって死んじまった」
     マンドランには申し訳のないことをした。ただの親友で、家族でもない他人であったが、一緒に妹のために悪事を働いたのだ。彼の遺体はどうなったのだろう、もし教会に埋葬されたのなら、あの世で口を曲げているに違いない。
    「妹さんが、あなたと墓参りをしたいと仰っていました」
    「親父とおふくろのか」
    「ご友人の方のお墓もです」
     あるのかは分からないようですが…と彼女の表情が曇る。戦死者だってきちんと弔ってやる余裕のなかった時代だ。そのまま野犬にでも食われた方が可能性は高いかもしれない。アイツならどっちがいいかなあ、と思うと少し笑えた。
    「行きたかったなあ」
     ぽろりと本音が出た。自分でも気弱になっているのがよくわかった。だってもう頑張り疲れたから。このまま世の中が平和になるにつれ自分は身体が動かなくなり哀れな病人として死んでいくのだ。ベッドの上で死ぬなんて上等すぎる気もするが、頑張ったんだからちょっとくらいいいだろう。
    「これからきちんと身体を治せば行けますよ」
    「医者の娘のくせに、えらく無責任なことを言うじゃねえか」
    「病は気から…と言いますから。頑張りましょう、ギャメルさん」
    「頑張る、ねえ」
     フッとバカにしたような笑みが溢れた。
    「頑張れませんか」
    「頑張る理由がもうねえんだ」
     そうですか…とセレストが俯く。そうだ、このままどうしようもないと見放してくれればいい。彼女は側にいるには眩しすぎるのだ。
    「では、私はこれからあなたを脅迫します。私に助けてもらった恩を返すために健康になってください。それで妹さんとお墓参りに行くんです。結婚もして家庭を築いてください。次世代に命を繋いでください。私が解放軍として戦った世界のために」
     セレストの目は真っ直ぐだった。
    「これはすごい脅迫だなぁ」
     つい笑ってしまった。
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    ゴンサン=カッショクスキー

    DOODLEギャメセレのようななにか
    脅迫「では、私はこれからあなたを脅迫します」
     どこの世界に宣言してから脅迫する娘がいるだろうか。それは目の前の娘である。かつて救いの手を差し伸べてくれたグリフォン乗りのお嬢さん…名はセレスト。彼女は痩せこけたギャメルの手を優しく握っている。彼女がその気になれば二度と使い物にならないくらいに骨と皮だけの手はグシャグシャに砕けるだろう。これはあくまで戦場での経験による憶測でしかないが、体格が同じくらいなら見た目に寄らず女の方が強いのだ。背丈は同じくらい、ただでさえ見た目にも彼女の方が肉付きがいい。そんなことはどうでもよくて…
     ギャメルは妹に回復の兆しが見えてきて以来、それまでのストレスと無茶が祟って体を壊してしまった。あれほど身軽に動けていたのが嘘のように身体は実際の体重とは裏腹に重く、力が入らなくなっていた。盗賊団にいた頃は食欲がなくても何かは口にねじ込んでいた。働ける身体でなければいけなかったからだ。けれど今はどうだ。妹はすっかり出歩けるまでに回復した。顔色も悪くない。きっとこれからはよくなるばかりだ。解放軍がゼノイラ軍を倒してくれたおかげで心配ごともめっきり減った。逆恨みするような連中もついでにやっつけてくれたのだ。ありがたい話である。
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    DONE七夕の時にあげた丹穹。

    星核の力を使い果たし機能を停止(眠りについた)した穹。そんな穹を救うために丹恒は数多の星に足を運び彼を救う方法を探した。
    しかしどれだけ経っても救う手立ては見つからない。時間の流れは残酷で、丹恒の記憶の中から少しづつ穹の声がこぼれ落ちていく。
    遂に穹の声が思い出せなくなった頃、ある星で条件が整った特別な日に願い事をすると願いが叶うという伝承を聞いた丹恒は、その星の人々から笹を譲り受け目覚めぬ穹の傍に飾ることにした。その日が来るまで短冊に願いを込めていく丹恒。
    そしてその日は来た。流星群とその星では百年ぶりの晴天の七夕。星々の逢瀬が叶う日。

    ───声が聞きたい。名前を呼んで欲しい。目覚めて欲しい。……叶うなら、また一緒に旅をしたい。

    ささやかな祈りのような願いを胸に秘めた丹恒の瞳から涙がこぼれ、穹の頬の落ちる。
    その時、穹の瞼が震えゆっくりと開かれていくのを丹恒は見た。
    一番星のように煌めく金色が丹恒を見つめると、丹恒の瞳から涙が溢れる。
    それは悲しみからではなく大切な人に再び逢えたことへの喜びの涙だった。
    「丹恒」と名前を呼ぶ声が心に染み込んでいく。温かく、懐かしく、愛おしい声…。


    ずっと聞こえなかった記憶の中の声も、今は鮮明に聴こえる。
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