hrhnチャンネル再生回数TOP5を振り返ってみた「どうも、祓ったれ本舗でーす」
「さて今回は、これまでの動画の再生回数ランキングを発表しながら振り返っていきたいと思います」
「じゃあ早速見てくか」
「まずは5位からだね」
二人の前に置かれた資料のうち、5位の内容が書かれたものを手にした五条が勢いよく噴き出す。
「ぶっ!」
「え、なに」
「第5位、【夏油傑泥酔事件!】」
「あれ5位なの!?」
予想外のランクインに驚く夏油の隣で、腹を抱えて笑う五条が机をバンバンと叩く。
五条が地方ロケなど一人での仕事で不在の夜、夏油は一人で酒を飲みながら配信をすることがある。その中でも特に再生回数が伸びたのが、夏油がこの晩酌配信を初めて2回目にあたる動画だった。
「スタッフの灰原が視聴者からのコメントを抜粋してくれてるので読みまーす。〔五条の話しかしない。本当に相方が大好きなのが分かる〕〔誰かこの一時間で何回『悟』って言ったか数えてほしい〕〔五条がいなくて泣いちゃう夏油様かわいすぎ〕〔普段どんなボケでも拾ってくれる相方がいなくて寂しくなっちゃったんだね…〕」
コメントを読み上げる五条の隣で、ばつが悪そうな顔を両手で多い項垂れる。
「非常に反省しております……」
「こいつ、俺がいないところで飲みすぎると泣き上戸になるんですよ。ほろ酔いくらいだとひたすらしょうもないボケを連発するくらいなんだけど」
「あれ以来ほどほどに飲むようにしてます……」
「ちなみに傑が一時間の配信中に『悟』って言った回数は173回でした」
「多っ!」
「単純計算で一分間に約3回名前出してる」
「自覚ないの怖いな……禁酒しようかな」
「ま、酔っ払って甘えてくるの嫌いじゃないしどっちでもいいよ。次は第4位、【祓ったれ本舗がゲーム実況してみたパート3】」
「あー懐かしいね。わりと祓本チャンネル開設して初期の頃だよね?」
「そうそう。パート3ってことは恋愛ゲームのやつか」
「どんなのだったっけ……〔五条がモテない理由が分かる回〕〔夏油以外の人間には容赦ない五条〕〔夏油様の人たらしってゲームでも通用するんだ〕〔このゲームにハーレムエンドあったのか〕」
「あー傑があのゲームをハーレムエンドで初めて攻略できた人物らしくてネットニュースになったやつだ」
「ああいう恋愛もののゲームは初めてやったから何も分からないままやってただけなのにね」
「俺は振られまくったけど」
「悟は選ぶ選択肢全部間違えてたからだろ」
「なんで好きでもない女とデートするのか分かんねえし」
「そういうゲームだからね? 続けていきましょう第3位、【疲れて帰ってくる悟に料理を作って出迎えよう】 ああ、これわりと最近のやつだね」
「俺が高校の部活動に参加したときのやつか」
「そうそう。悟が番組の企画でサッカー強豪校の練習に参加することになってて、その後にこのチャンネルの収録に合流することになってたから、疲れて帰ってくる悟に何か手料理作って待ってようっていう回ですね」
「死ぬほど疲れてたからってのもあるだろうけど、めっっっっっっちゃくちゃ美味かった」
「本当? よかった」
「この回はコメントの統一感もすごい。〔茶色〕〔あまりにも茶色すぎる〕〔茶色一色〕」
「茶色は正義だからね」
ドヤ顔で言い放つ夏油の横で、五条が当時の料理の写真を画面に映す。唐揚げ、エビフライ、生姜焼きと、灰原が打ち上げのビンゴ大会で当てたからと配信部屋に置いていたたこ焼き器で作ったたこ焼きが乗ったプレートはまさに一面の茶色だった。
「私達二人ともなんだけど、他人の手料理が苦手なタイプで」
「そういえばそうだな。基本的にプロ以外が作る系の番組はNGにさせてもらってる」
「だから当たり前のように悟が食べてくれるの嬉しいんだよね。相方特権ってやつかな」
「もう第2位いきましょうか」
「照れてるな?」
「照れてねーし。ハイ第2位、【第1回 ボケ当て選手権】」
「これが2位なんだ?」
「SNSでもすげーバズってたらしい」
ボケ当て選手権とは祓本チャンネル内の企画で、スタッフ達や後輩芸人達を交えて一つのお題に沿って答えられた複数のボケの回答の中からどれが相方の夏油が考えたボケかを当てるゲームである。
「コメントも過去最高にきてたらしいので一部読みますね。〔なんで全部分かるの?〕〔五条もはやキモい通り越して感動した〕〔正解したら罰ゲーム受けるの夏油様なのに五条が当てて嬉しそうなの可愛い〕 いやコメントの通りだけど、なんで分かったの?」
「ワードチョイスが傑だったし、ボケ方が傑だったから」
「そんなに独特なワードチョイスしてるかな」
「分かんねえけど、ツッコミとして傑のボケをいつでも拾えるようにアンテナは広げてあるから、そういう意味ではオマエの喋ること一言一句意識してはいるかも」
「それでも全部当てられるのはすごいよ。さて、続いて栄えある第1位は!【祝夏油生誕祭!五条が蕎麦打ちに挑む】です」
「え、めちゃくちゃ最近のじゃん」
「他のと比べて群を抜いて1位だったらしいよ」
毎年お互いの誕生日に合わせて動画を更新しているが、祓本チャンネルを開設し三年が経った今回も例年通り更新された。
過去の動画ではブランドものやお揃いのアイテムなどをプレゼントしていたが、今年の夏油の誕生日に五条が選んだものは、夏油の好物の一つである蕎麦を自ら作ることだった。半年前からスケジュールの合間を縫って老舗の蕎麦打ち職人の元で修行を重ね、ついに師匠のお墨付きを得た五条が打った蕎麦を一緒に食べる動画は、祓本チャンネルの歴代の動画再生数の中でも驚異的なスピードでトップに躍り出たのだった。
「コメント読みます。〔ファン歴そこそこ長いけど五条のあんな真剣な顔初めて見た〕〔夏油様のためなら職人の元で修行もできる男〕〔喜ぶ夏油様の反応見て照れてる五条可愛すぎない?〕〔老後にお店やろうって、老後まで一緒にいるつもりなんだ……〕」
「実際あれは店出せる」
「オマエ俺が料理作るとすぐ店出そうとしてくるけど、全部間に受けてたら今頃ショッピングモールのフードコートみたいになってるからな」
「銀座に店出そうよ」
「だから老後な、老後。引退したらやろ」
「真面目にその選択肢ありだよね。さて、トップ5まで振り返ってきましたけど」
「懐かしいのもあったし、最近のもあったけどそうなるくらいには色々やってきたな」
「そうだね。これからも色々面白い企画をやっていけたらと思ってるので、よろしくお願いしますー」
「祓ったれ本舗でした。さよならー」