かわたれ時の君彼女の意識は電車の中から始まった。
走行音の静かな電車は、まるで宙にでも浮いているように、わずかな乗客とミリアリアを乗せて走っている。
電車に座ったまま、うたた寝をしてしまっていたのか、ぼんやりとした視界が徐々にひらけていく。車窓から見える景色は薄暗い。夜明け前なのか日が落ちた後なのか、それとも嵐の前のような分厚い雲がかかっているのか、そもそもヘリオポリスに嵐など来ていただろうか。そんな疑問が頭をよぎり、今いる場所がヘリオポリスだということを認識する。
昼か夜かもわからない、彩度の落ちた世界の中にミリアリアは居る。
「そうだ授業……間に合うかしら」
そう呟く彼女の膝の上には、学校の授業に使う参考書や筆記具などが入れられた、通学カバンが置かれている。
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