「あらよっ…と!」
視界を眩い花火が満たす。彼の義手から放たれた炎が目の前の一切合切を焼き払う。深紅色の火炎に照らされて黄金に輝く亜麻色の髪が、グレゴールの動きに合わせてふわりと靡くと同時に、赤いリボンがひらりと揺れるのが否応なしに目に入った。
リウ協会人格の彼だけが結んであるそれは、彼の髪の上でまるで少女のような可憐さで存在している。私はよく似合っていると思うのだけれど、他の囚人たちに言わせれば、"おっさんにしては可愛すぎる"それを、なぜ結んでいるのか。その理由を彼が言うこともなければ、聞いたこともない。なんとなく、何か理由があるのかも、とは思ってはいるが、その理由が彼のどこに触れるか分からない以上、好奇心で暴こうとするのは気が引ける気がする。
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