The day after(ラブレター) 狡噛がいなくなってから世界は色を失って、彼に再び会ってから色をとりもどした。彼が海外ででも生きていることに俺は安心して、どうにかこうにかやっていけた。狡噛は便りをよこさなかった。一通も。頭の回る彼のことなのに、俺に合図を送らなかった。俺はそれに安堵したような、悲しかったような、不思議な感覚を覚えたのを思い出す。一人でも生きていけるから便りはいらない。一人でも生きていくために便りが欲しい。そんな時に見つけたのが、彼が公安局を出奔する前に俺に置いて行った手紙だった。
それは非公式には存在しないことになっている。というのも、俺が報告しなかったからだ。狡噛の手紙を見つけたのは彼とよく遊んだ廃棄区画のガレージだった。仕事のついでにどうなっているか見に行った時、そこに一通の、埃をかぶった手紙が置かれていた。内容は次のようなものだ。これから仕事を一つ片付けなきゃならない、すまない、愛している、あの時からずっと。
889