ワンドロ「出会い」 ──開けたクローゼットから、毛玉が転がり落ちた。
突然鳴り響いた爆音は、家主であるドゥリーヨダナの手からカラトリーを落とすには十分過ぎるものであった。平皿の上に落ちたフォークが更に跳ね返り、床へ消えていく。しかし、それを拾い上げるだけの余裕が今の彼女には無い。
なんせ、ここは一人暮らしの室内。来客を招いているならまだしも、己以外の気配があっては大問題だ。
何かがクローゼットの中でドタドタと暴れている。呻き声が聞こえる。
悠長に夕食を取っている場合ではなくなってしまった。彼女はすぐさま席を離れ、届く距離にあった花瓶を武器代わりに抱えて、物音の煩いクローゼットへ近づいていく。
なに。時代が違えど……性別も違うが。この身は幾度と闘いを乗り越えた[[rb:武人 > クシャトリア]]。たかが不法侵入の獣如きに怯んでいては、かつてカウラヴァを率いた長子として示しが……
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