吸力鬼、中井朱那の始まりの吸血私は中井朱那(なかいあかな)
赤い髪でショートぱっつんで、オレンジ色の目の女の子。
運動もできないし、勉強も追いつけないし、体調のいい日も全然なく休みがち、唯一絵はちょっと描けるくらいかな…
味覚もほとんどなく食事なんて取りたくない。昔は食べるのが好きだったのにな…
感情も全然コントロールできないから急に泣きたくなるし、すぐ手首を朱く染める遊びをしてしまう。その遊びをほっぺでやってたら、右目に…ってなって眼帯をしている。
虹実高校のほんとに救いようのないくらいポンコツな2年生。
そんな私の数少ない癒やしは夜の散歩、走るわけでもないのにジャージ、静寂さと涼しい風の心地よさが死にたい気持ちを和らげてくれる。
ある日の夜の散歩にて
「いたっ!」
突然肩に刺さるような痛みを感じた。
見ると肩を大きなコウモリに噛まれている。振りほどこうとした瞬間
「ああああっ!」
身体中に電撃に似たしびれと、吸われたような感覚を感じた。
少ししたらそのコウモリは肩から離れ、人型に変身して呟いてきた。
「君にはとてつもない素質がある…私の盟主として吸血鬼になってもらおう…」
そして飛び去って行った。
「はぁっ…あっ………あれ」
「体が軽い…?」
私は吸血鬼になってしまったのだろうか、吸血鬼なんて空想上の生き物だと思っていたのに。
恐る恐る自分の手首の傷跡の血を舐めると、とてつもなく美味だった、本当に吸血鬼になったんだ…試しに空を飛んでみる。
「空を飛ぶの気持ちいい…最高…!」
しかもそれだけではない。
「心がさらにぐちゃぐちゃになってるような…もしかして…」
血を吸ったらその力を得られるんじゃないかと思った私は、去年の校内マラソン大会で1位を取っている同級生を探した。この時間にランニングしているのを私は覚えていた。
「いたいた…」
空から急降下して正面に着地して
「ねえ」
肩をめがけて一気に飛び込み囁く。
「きみの力、ちょうだいよ」
こんなことしなくても背面からいきなり噛み付けばいいのだが、今の私はテンションが上がりすぎてカッコつけてしまった。
肩に噛みつき血を吸う。体が更に軽くなっていき、血を吸うのをやめて思いっきり走ってみると、とんでもなく速く走れた。
「間違いない、力を得られる...楽しい…!」
私の人生の楽しみをようやく見つけた気がした。