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    risa50882145651

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    risa50882145651

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    短いkksgです。
    番外編後の二人です。

    中間試験「ねぇ、カキツバタ!!」

    夜の部室、就寝時間直前でしかも二人しかいない部屋に音量だけで言えば似つかわしくない、しかし状況的には仕方のない声量でスグリの怒声が響いた。スグリの目の前に垂れ下がっていた独特の形で固められた白髪が勢いよく持ち上がり、そのままびよんびよんと振動する。

    「あちゃー、悪いねぃスグリ、オイラまた寝ちまってたかね?」
    「目の前で俺に勉強教えられながら寝るなんて、信じらんね」

    そもそもカキツバタが夜の方が集中できるって言うからわざわざ夜にやってるのに、と文句を言いながらスグリが手を伸ばし、カキツバタの腕の下で皺が寄ったノートのページをさする。当然紙についた皺は元に戻らず、はぁ、とスグリはため息を吐いた。

    「カキツバタは、バトル、まぁ少しは強い方なのに、なんで勉強できないんだか」
    「ん〜、こうなるからかねぃ? しかしスグリ様? 少しは強い方って、悪意ある言い方じゃないですかねぃ。オイラ、お前さんとキョーダイ除けば一番よ?」

    引っかかりのある言い方に対してカキツバタが反応してみせると、スグリは嬉しそうに口角を上げた。

    「カキツバタは勉強できねっから弱いに違いね!」

    スグリのわかりやすい挑発を受けてカキツバタは苦笑しながらペンを握り直す。

    「へいへい。元チャンピオン様のお眼鏡に叶うよう努めさせて頂きやすよ」

    作戦成功とばかりにスグリが笑い、そうして勉強する二人の夜が更けていく――。



    「…………」

    2年の教室で、カキツバタは目の前に浮かぶスマホを眺め、難しい顔で腕を組んだ。そこには落第点となる数値が記載されている。とはいえ、カキツバタには先週に行われた試験の時点で半ばこうなることはわかっていた。なぜなら、寝坊して試験に遅刻したからだ。しかし、そのことはスグリにはまだ言っていない。

    「ツバっさん、またアレすか!」

    カキツバタの現同級生・元後輩が面白がるようにスマホを覗き込むのを、適当な冗談で混ぜ返しながらどうしたものかと思案する。

    「逆に言えば、オイラ、遅刻して10分しか試験時間無かったのに24点取れたんだぜぃ」
    「うっは! てことは50分フルに使えてれば120点じゃないスか! 半端ねっす!」
    「だろぃ⁈」

    もちろん、スグリには通用しないどころか激怒されるに違いない冗談である。



    スグリは部室に入室してすぐにカキツバタの元に向かったが、カキツバタの表情を見て少し歩み寄る速度を落とした。

    「カキツバタ、どうだった……?」

    おずおずと尋ねられた問いに対してカキツバタは目を瞑り、眉を下げ、首を振った。

    「そっか……」

    カキツバタにとって誤算だったのは、目を瞑ってしまったために、みるみる曇っていくスグリの表情に気付くのが遅れたことだ。

    「オイラにはやっぱり(起きるのが)難しかったねぃ。まぁ仕方ねぇってこった。まだ確
    定じゃぁないが、来年はスグリとも同級生かもねぃ、よろしく頼むぜぃ」
    「……ごめんな、俺、役に立てなかった……」

    聞こえた声色に、カキツバタが違和感を覚えて目を開けた時には、泣き出しそうなくらいに眉を下げ、瞳を揺らすスグリがいた。

    「お……」
    「カキツバタの時間、俺が無駄に使わせちまったのかも……、俺、教えるの、うまくない、から……」
    「いや、そんなことは、ねぇよ?……」
    「俺、教えてやるなんて、偉そうなこと言って……ごめん……」
    「あっ」

    ぐるんとスグリが勢いよく踵を返し、小走りに部室から出ていく。カキツバタが焦りながらもふと周りを見ると、同じクラスの部員、すなわち、先ほど教室でカキツバタ達が試験の顛末について盛り上がっている場にいたために事情を知っているであろう部員が、冷たさを感じさせる瞳を向けていることに気が付いた。その部員自体、スグリがチャンピオンの時に一度居心地の悪さに辞めてから復帰した人物であったのだが、今このタイミングにおいては、彼がどちらの味方であるかは明白だった。カキツバタは何か言い訳をしようと口を開いたものの、その部員は視線を投げてきてはいるが、話しかけるには少し遠い距離で、何より、その目が、そうじゃないだろ、と言っている。更に、他の部員達も微妙な空気感の中心であるカキツバタに徐々に視線を向け始める。

    「……あ〜、……オイラ、今日は帰りま〜す」

    結局、いたたまれずに誰にともなく挨拶をしてカキツバタは席を立った。そこで事情を知らない部員達は視線を戻したが、事情を知る彼からのプレッシャーを掛けるかのような視線は逸らされず、背に視線を受け続けたまま部室を出た。

    (いやぁ、さすがに、次の試験は真面目にやらないとダメかねぃ。オイラが部室の空気悪くしてちゃ世話ねぇわ)

    カキツバタはつい出そうになった欠伸を反省の印として噛み殺しながら、先にスグリ行ってしまった方へ歩き出すことにした。
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