私のお母様説得はそろそろ十回を超えた。
どうしても認めてはもらえないならそれも止む無しと思っていたけれど。
「愛し合っていると言ったわね」
何度も門前払いを食らっていたが、今日は初めて会話になりそうだった。
「はい。確かに、私と叔父様は愛し合っています」
語気を強めて繰り返すと、母は眉根を寄せて不愉快そうにした。
そして、あらぬ方を見ながら、そう、とだけ言うとまた黙り込んでしまった。
しばしの沈黙の後、母は重い口を開いた。
「私はあなたがセトに好かれてはいないと思っていたのよ」
まじまじと見つめてくる。
「だってそうでしょう?あなたはあいつから王位を奪った張本人。それにね、あのこは本当に好き嫌いが激しいの。昔から私達兄弟とアヌビス以外に全く心を開かなかった。あなたは身内ではあるけど、降って湧いた他人に近い者。それどころか敵同士だった」
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