Pants and Prejudice 旅先のホテル、朝。
ノーマンはスーツケースを開けたまま、じっと中を見つめていた。
「……ない」
呟きは静かだったが、どこか底冷えのするような声だった。背後でシャツのボタンを留めていたエードリアンが振り向く。
「何が?」
「下着が一枚消えてる」
ノーマンが振り返る。視線が妙に鋭い。
「昨日まではあったはずだ。……エードリイ?」
「僕かい!?」
エードリアンは思わず身構えた。
「まさか、君、僕を疑ってるのか?」
ノーマンは返事をせず、ただそのままじとーっとした眼差しで彼を見ている。
「僕は潔白だ! 何なら、今ここでスーツケースを開けようか?」
エードリアンは胸を張った――ものの、やや自信なさげに目が泳いでいる。
962