雫型のマリッジリング「もう逃げられないよなぁ…」
リオセスリは大きなため息を着くと、時間稼ぎでもするかのようにゆっくりと馬車を降りていく。
リオセスリはうら若き公爵の子息である。その歳は二十歳。
そして今は所謂「お見合い」をすべくご相手の邸宅に訪れているところだ。
リオセスリは若者の自由を謳歌すべく今の今まで見合い話等は上手く躱してきたが、ついに親に追い詰められ、大人しく馬車に揺られていたのだ。
ゆっくりとした足取りで降りると、きっちりとした執事服を身にまとった召使いが待ち構えていた。その背後には、今まで見てきた中でもトップクラスに豪華で古めかしい豪邸が立ちはだかっている。
「公爵令息様ご機嫌麗しゅうございます。お待ちしておりました。大公様は中庭におります。案内はこの私めにお任せ下さい」
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