水遊び「あの……鍾離様……」
「ん?」
「これは……一体……」
望舒旅館が見える、そう遠くない浅瀬にて、川に沿うように鍾離と歩いている。
ただの散歩であれば、ここまで疑問に思うこともなかっただろう。魈の右手は、鍾離の左手と繋がれている。二人とも手套を外し、装具も付けていない装いだった。なんなら靴も履いていない。素手で鍾離と手を繋ぎ、ちゃぷ、ちゃぷ、と浅瀬を歩く水音だけが耳に聞こえる。
「水に慣れようと思ってな。お前と共になら急に蟹が現れても驚かないだろう」
「はぁ……」
「うっかり滑って転びそうになっても、お前であれば受け止めてくれると思ったが、違っただろうか」
「いえ……」
さようでございますか。我がお役に立てて良かったです。
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