都落ち女がキタカミで余生みたいな生活をする話 移住編(≠主人公) 思いあがった私が挫折するのは必然だったんだろう。旅ばかりで増えることのなかった少しばかりの荷物を抱えて私はキタカミ地方の端、スイリョクタウンの古びた家の前に立っていた。
祖母が亡くなってから誰も住むこともなくなったその家は建付けが悪く、日に焼けた木製の玄関扉が軋んで夜に進化したルガンガンの鳴き声みたいな音を立てる。ほこりが舞い、どこから侵入したのだろう同じように家主がいなくなった蜘蛛型のむしポケモンの巣が私を出迎えた。
「これは中々……」
新たな我が家のあまりの惨状に、思わず独り言ちる。
倒壊や雨漏りはしていないとの話だったが、床に積もったほこりにはくっきりと四本脚の足跡が残っているし、亡き祖母の家財道具どころか我が家の不用品であろう荷物まで置いてある。これを片付けるのは骨だろう。
10019