雨音とキス。 外は大きな雨粒の音がする。先程までは軽い雨だったというのに、 窓を叩きつける重い雨音は窓もカーテンも通り越しばちばちと部屋に響き渡り、灯りのついていない部屋は少しずつ暗闇に包まれていき視界を奪われ、文字は読みずらいものとなっていた。

「だいぶ降ってきたな。」

リビングのソファで雑誌を眺めるルビー。その隣で本を読んでいたアクアは雨空を見上げぽつりとつぶやいた。その言葉を聞いて同じようにルビーも視線を空へ送ると眉尻をしゅんと下げる。

「えー、せっかくこの後おでかけしようと思っていたのにー。」
「出かけるって、どこに行こうと思っていたんだよ。」
「この雑誌に載っている新作ワンピ！かわいくない？！これが欲しかったのと、珍しくわたしもお兄ちゃんもオフの日だよ？こんな貴重な時間滅多にないんだからデートくらいしたかったな〜。」

風邪ひきアクアはキスがすき。「だりぃ…。」

室内に熱を持った吐息が途切れることなく溢れる。ベッドには額に汗を浮かばせたアクアが横になっていた。
季節の変わり目は体調を崩しやすい。二週間の長いロケが終わり束の間の休日を迎えたと思っていたらこの有様だ。
熱は三十九度とかなりの高熱で先程飲んだ解熱剤はまだ効いておらず息も絶え絶えとなりとても苦しいが休みが明けるまでにどうにか治して置かなければ。そんな事を考えているとコンコンと扉がノックされがちゃりと微かな音を立てて扉が開く。そこからひょこりと顔を覗かせたのはルビーだった。

「お兄ちゃん大丈夫？」

ふわりと長いはちみつ色の髪がゆれてとことこと近づくとその手に水差しとカップを乗せたトレーを持ちながらルビーはベッド脇に置いてあるイスにちょこんと腰掛けた。