『雨降って地は固まるが、先は荒海』縮地千里を通り抜け、辿り着いたのは人界の温泉街だった。
素朴だが、露店や商店が立ち並んでいる様は十分に賑わっており、行き交う人々の表情は明るい。
そしてその向こうに広がる青い海。
「わぁ、すごい!君がこんな良い場所を知っていて、しかも誘ってくれるなんて!どう言う風の吹き回しだい?明兄!」
喜色を浮かべて明儀の腕にじゃれつく師青玄に、明儀はすたすたと歩きながら素っ気なく言う。
「地師である私が土地を掌握しているのは当たり前だ」
「確かに、良い土地だ」
その少し後ろを歩く謝憐も微笑みながら周囲を観察し、そのまま無言で隣を歩く花城を見る。
花城はその意図を汲み、小さく頷いた。
「ええ、ここはアイツの…………黒水の縄張りです」
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