リクベジデート導入リクームさんと休日デート!
「おはよう、ベジータちゃん!」
朝にぴったりの明るい声。仕草も完璧。紳士的かつセンス溢るるポーズで話しかけたはず。しかし声をかけられた相手は、元来その表情しか搭載していないのか疑問に思えるいつもの不機嫌顔をさらに深めたのであった。今にも舌打ちしそうだなあといった感じだ。
「チッ……」
実際にした。これはよろしくないので注意をする。
「ダメだぞ、ベジータちゃん。挨拶されてるのに舌打ちなんかしちゃ。オレじゃなかったらぶん殴られてるぜ。」
そう、オレじゃなかったら。オレは例外なのだ。何故ならこのかわいいかわいいベジータちゃんのことが大好きだからだ!しかし好きだからといって手を上げないような柔な性的趣向はしていない。"まだ"その時ではないだけ。今はとにかく自分が想いを寄せていることを相手に伝えたい段階であった。
「……要件があるなら早く言え。」
「今日はベジータちゃんもオレも休みだろ?だから一緒に遊ぼうかと思って。」
「いや今から侵略だ。」
「息するように嘘をつくなんて流石ベジータちゃん。でも残念、隊長がサイヤ部隊は久々の休日って言ってたのを知ってるんだ。」
隊長はオレのベジータへの恋心を把握して応援してくれている。あまり迷惑をかけすぎるなよ、という言葉もあったがこうして休みの予定などを漏らしてくれたりするのだ。優しい隊長。最高だ!
「ならば他部隊の休日を漏らすなとギニューに伝えておけ!俺は休みだろうと忙しいんだ。貴様に構ってる暇はない。」
「待ってよ〜!今日構ってくれないとオレ悲しくてこの間のこと隊のみんなに話しちゃうかもな〜。」
「チッ……!くそったれ……!!」
舌打ち音最高記録を更新しつつ悪態をついたベジータであるが、顔を思いっきり顰めながらも踵を返した足を止めこちらへ戻ってきた。
この間のこと。それは軍の研究室から逃げ出した触手型宇宙生物に襲われていたベジータをリクームが助け出した一件のことだ。
その時のベジータは、戦闘力も大してないような生命体に捉えられ精を搾り取られそうな危機であった。生来ニョロニョロしたものが苦手なため、生理的嫌悪による気持ち悪さとパニックで碌に抵抗もできずにいたのだ。そこに格好良く登場し助け出したリクーム。これは惚れる。リクーム様主人公ベジータヒロインルート間違いなしだった。
それは全くの勘違いであることは誰に聞いてもわかるが、リクームにはわからない。そのため誘いを断られているのを、いつものツンデレ節で一緒にいたいのに言い出せないのだと解していた。だから取りたくない脅しのような手段を選んでまでもベジータが素直になれる手伝いをしたのだ。
その甲斐もあってかベジータは近くでじっとこちらの言葉を待っている。照れ隠しなのか目線は合わないが、先ほどのようにどこかへ行くことはない。顔はムスッとしているがそれがベジータの可愛いところだ。
「じゃあベジータちゃん。オレとデートしような!」
かくしてリクームとベジータの休日デートはスタートしたのであった。