将来の約束「わー!すげー!」
街を一望できる絶景に、山本はキラキラと瞳を輝かせた。約一ヶ月ぶりにあった恋人のスクアーロに連れてこられたのは、彼が宿泊しているホテルだった。山本のはしゃぎぶりを、スクアーロは優しく見守っていた。
窓の外を見た後は部屋の中を見て回る山本。スクアーロは己が座るベッドの隣に山本を呼ぶと、会えなかった期間を埋めるようにキスをする。ちゅ、ちゅ、と角度を変えながら唇を合わせる。
「ん、スクアーロ…」
山本はスクアーロの服をぎゅっと掴んでもっとと強請る。スクアーロは山本の頭を抱え深く口づけた。舌が山本の口内に潜り込み、歯列をなぞり上顎を撫でる。それだけで山本の瞳はとろんと蕩けた。
口が離れると、山本はくたりとスクアーロに寄りかかった。その頬は赤く染まり、瞳は潤んでいる。スクアーロの理性が揺さぶられたが、今回スクアーロが山本に会いに来たのは明確な理由があるからで、それを思い出してぐっと理性を保つ。
「山本」
「ん?」
「手、出せぇ」
スクアーロはチェーンの通されたシンプルな指輪を山本に握らせる。山本はきょとんとしながら「指輪?」とチェーンを持ち指輪を見る。よくよく見ると、スクアーロと山本の名前が彫られていた。
「なくしたら3枚におろしてやる」
スクアーロが会う度に何か手土産を持ってくることは珍しくない。だが、アクセサリーの類いは初めてだった。野球と剣、どちらでも邪魔にならないように気を遣ってチェーンに通してあるのだろう。
「何で指輪?」
「…予約だ」
「予約?」
「………察しが悪ぃぞぉ!付き合っててこの時期に指輪を渡すなら、わかるだろ」
「この時期?…梅雨?あ、指輪と関係ねーか」
「ジューンブライドだぁ!」
「ジューンブライド?」
山本はスクアーロの言葉を聞いて、思考をフル回転させる。そういえば学校で女子がなにやらジューンブライドがどうと話していたのを思い出し、指輪とスクアーロを交互に見る。
「6月に結婚すると幸せになるってやつ?でもオレまだ結婚できないのな」
「だから予約だって言ってんだろぉ!」
「スクアーロ、オレと結婚してくれんの?」
目をパチパチさせる山本。スクアーロは頬をほんのり赤く染めると頷いた。山本はぱあぁと笑顔になり、スクアーロの腕に抱きつく。
「会えない間も、それ身につけて忘れるな」
「おう!…へへっ、嬉しいのなっ!スクアーロ、着けてくれよ」
山本は指輪をスクアーロに渡す。受け取ったスクアーロは山本の首にかけた。光を反射しキラキラと光る指輪。山本は嬉しくなってスクアーロの首に腕を回し抱きつくと、耳もとに口を寄せ「スクアーロ大好き」と囁いた。スクアーロは山本をベッドに押し倒し、無防備な唇にキスをする。
久々の逢い引きで将来を約束し、二人の絆は深まったという。