「(間違えた)」
エグザべがそれに気付いたのは、手のひらにプッシュしたシャンプーを勢い良く自身の髪で泡立てた時だった。
この家には二種類のシャンプーがある。ひとつはエグザべのもので、ドラッグストアなどでリーズナブルに入手出来る製品。残るひとつは、共に暮らしているシャリアのもの。ウッディ系(コモリ少尉に教えてもらった)の匂いがふわりと香り、それでいて彼の身に纏う香水の邪魔にならない。まさに落ち着いた大人の男性、といった香りだ。
そのシャリアのシャンプーの匂いが浴室に広がっている。髪を泡立てたまま、エグザべは少しだけ思案した。
「(…今日明日は別行動の予定だからバレることはないだろう。それに、あの人のことだから、もし仮にバレたとしても怒ることはしないだろうし)」
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