外の匂いがする。
薄く目を開くとカーテンが大きく揺れているのが見えた。夜なのに風が強いみたいで、閉め損ねた窓がガタガタ鳴ってうるさい。寝直すにしたって、音が大きすぎる。
俺はベッドから起き上がって窓に手を掛けて、なんとなくそのまま窓の外を眺めた。
バライの宿屋街は真夜中なのに店先の灯りがついたままで、妙に距離が近い二人組が何組も宿に入っていく。その流れに逆らって出てきた獣人とヒュームがキスをしているのが見えた。冷やかす声も遠慮のない目線も気にしていないみたいに、堂々としてた。ずっと見ていると悪いと思ってなるべく静かに窓を閉めて、ベッドに潜り込んだ。
眠ろうと目を閉じると、さっきのキスが目蓋の裏に浮かんできた。思わず頬が熱くなって、もののついでに股間も熱くなっていた。馬鹿みたいに影響されやすい俺の悪い癖だ。誰かが親しげに寄り添ってる所を見ていると、どうしても人肌が恋しくて全身にゆっくり熱が回る。
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