五条悟はあきらめない! 通算一二九六回目のお見合いを破談にさせたその足で、悟はティファニーに向かった。頼んでいた特注のエンゲージリングが仕上がったとの連絡が留守電に入っていたためである。
古めかしい羽織を脱ぎ捨て、お付きの人間を振り払い薙ぎ倒し、身軽になった身体で店舗までの道をスキップで歩く。二月の東京は寒い。車を拾っても良かったが、今はなんだか無性に歩きたい気分だった。
どうやら現在のエンゲージリングのメインストリームを作り上げたのはティファニーらしい。とはいえ悟としては別段ブランドにこだわりはなく、カルティエでもハリーウィンストンでもブルガリでもどうでもよかったけれど、ティファニーブルーって朝焼けの下で見る悟の目の色にちょっと似てるね、と誰かさんが言ったので、買うなら絶対ここだと決めていた。
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