at the lakesideあの頃、父親は絶対だった。
「庶民と結婚したいと?」
「はい、お許しいただきたく思います」
「ならん」
アーニャとの結婚の許可をもらうため、久しぶりに自宅に戻り父にお伺いをたてたところ、想定通り「NO」と返ってきた。
盲目的に慕っていた。父が全てだった。認められたくて、褒められたくて、愛してほしくて、できることは全てやった。
こうして今、向かい合っていると、あぁ、父も歳を取ったのだなと思う。一見すると、どこにでもいる中年男性だ。相変わらず眼光だけは鋭いが。
「なぜですか?デズモンド家は、今更婚姻で血縁関係を強化する必要はないはずです」
俺が反論するとは思わなかったのだろう。少し怯んだように見えた。
「口答えをするな。お前の相手はもう決まっている」
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