午前零時を迎えに来いよ通路の奥からまばゆい光を纏った男が歩いてきた。
透き通るような金の髪にライトが当たっているだけとは思えない神々しさだ。
俺の恋人は意味深な笑みを浮かべて「赤井」と天使の奏でる音楽の調べに似た響きで俺を呼び留めると、意味深な笑みで周囲の足を止め、俺の耳に「楽しみにしてます」と囁いた。
ああ、悪魔め。
「そうだな」
「では、また」
部下を従えて去っていく後ろ姿は魔界の王と言ってもいいオーラがあった。
「何を言われたんだ、アカイ」
「組織の残党に関する新しい情報?それとも……」
「いや……なんでもない」
何もないことはないだろうという表情をしているのは自分でもわかる。彼に声を与えられた耳は焼けるほどに熱く、手からは汗が噴き出している。
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