長谷部が選択を誤った場合。 長谷部は画面を流れる文字列を頬杖をついて眺めていた。実行中の処理が完了するまでしばらくかかる。今のうちに他の案件の作業を進めておこうか、と考えもしたがそうするとそちらに集中してしまって目の前で流れている処理が終わっても気づきもしないだろう、と諦めた。パソコンのようにマルチタスクで働くのは人間には難しい。
まだ週が始まった月曜日だというのに、時刻は既に夜の9時を過ぎている。常に残業しなければ成立しない業務量が肩に乗っかっているため、先週定時上がりした分の遅延を取り返す時間をどう捻出するか悩ましかった。そんなだから、結局日曜も光忠とのことを深く考える間もなく持ち帰りの作業に費やしてしまった。
どうしたものか、となんとなく執務室を見回してみると皆一様に顔色悪く画面に向かっている。各地のデスクの上で栄養ドリンクやエナジードリンクの瓶、缶が端に乱雑に並んでいる。劣悪だ。職場環境も、精神状態も。
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