アストレア・アストリッジの生い立ちや過去-アストレア・アストリッドの生い立ちと過去-
代々神と繋がりがある一族アストリッド家の次女として産まれた。
アストリッド家はショウガラゴ特有の大きな耳でお告げを聞くことができ、信仰心がとても強くどんな時も---様へ感謝の気持ちを忘れず、
"お告げ"の通りにすべしと言われ育ってきた。
---様の声を代理で伝える一族として村の中心となり、
時折王都へ向かいお告げを届けてきた。
兄妹の中でもアストレアの弟は特に信仰心が強く、
次期お告げを受け取る者の第一候補として育てられてきた。
「 −−−様への感謝を忘れなければ、
青い空の元、この地の平穏は続きます。この地は守られている。 」
村民たちに毎日伝え、その一言を只管村民たちは信じてきた。
だが、平穏はそう続かなかった。
突然豊かであった小麦色の景色は黒く燃え、
誰もが信じていた青い空は赤黒く濁っていった。
戦争がはじまり、他の集落や部族は自分の住処から出て避難していた。当然だ
だが、アストリッド家が中心として作られてきたこの村だけ村から出ようとしなかった。
"逃げられなかった。"
現お告げの器であった父の一言があったからだ。
「 この火の海は、私達人類のためであります。この村から立ち去るもの、
神の御加護に対する反逆とみなす。共にこの赤さを称え、村へ留まりなさい。
国王へ感謝を告げなさい、と神からのお告げです。 」
この一言を村民たちはしがみつくように信じた横で
豊かな緑に囲まれていたこの地が真っ赤に燃え上がる中、村へ留まった。
地をかける音が遠くから聞こえてきたことに気がついた。
アストレアは家族の中でもダントツで遠くまで音が聞こえていた。
アストレアは音が気になり、音のなる方へ向かうと、
複数の兵士が馬に乗ってこちらへ向かってきていた。手にはたくさんの縄、武器。
アストレアは急いで村に戻り、そのことを伝えてこの場を逃げようと伝えるも
父は頑なに”お告げの通りにしろ”と拒み村民たちも殆どの者が
アストレアの言葉を聞かなかった。聞こうともしなかった。
アストレアの弟は言った。
「姉さんには神への信仰心が足りないから、加護されないんだ。
だからそんなに不安になるんだ。可哀想に。自業自得だ。」
アストレアは絶望感と怒りに包まれた。
何故、そんな信憑性もないものばかり耳に入れ
私が目で見た真実は耳に入れてもらえないのか。
何故、目の前にある命の危機よりお告げの方が大切なのか。
何故、私はみんなを逃がせられる力がないのか。
なぜこんなにも無力なのか。
アストレアは火が燃えさかるところを駆け抜け、
がむしゃらに自身の魔法で村の入り口をツルで覆い、村を隠そうとした。
必死だった。どうかあの兵士たちから一瞬でも1秒でも多くこの村を隠して。
だが当然、ツルは火には勝てないため火がうつりどんなにツルでかためても燃え散った。冷静に考えればわかる事だが、全身を火傷していても、ツルが燃え散っても、
そんな状況を理解できないくらいアストレアは怒りと絶望感でおかしくなっていた。
知らぬ間に視界が暗くなり、意識が途絶えた。
魔力を感情のまま使いすぎたことが原因だろうか。今は眠っていたい、深く_深く__、、
目が覚めたときには焦げた匂いと冷たい土の感触が頬に感じ、
あたりを見渡すと何もかもなくなっていた。
みんなで収穫祭をする為に用意していた飾りや、お祭りの為に作ったアーチも、
沢山咲いてねと笑いあったあの花の花壇も。
黒い残骸、縄で首を括られた人達、
誰なのかももう判別不可能になったヒトが沢山倒れていた。
地獄に落ちたのだと思った。私が皆に伝えることを諦めたから、私の罪なのだ、
それを償うために地獄落ちたのだと、錯乱した。
そんな黒い残骸の向こうから見慣れない真っ白な上質な馬に乗った父、母、弟、姉の姿があった。何もなかったかのように無傷であたたかそうな格好をしていた。何故傷1つないのだろう、嫌な妄想が頭をよぎり、家族が悪魔のように見えてきた。
アストレアはもうこのまま、離れたい、もう見つけないでほしいと願った。
そんなアストレアの願いは消え、
アストレアの姿を見つけた母が馬で駆け寄りアストレアを強く抱いた。
アストレアは放心状態で、長い間馬に乗った。弟と共に乗っていた。アストレアは手綱を強く持てなかった。ただ揺られていた。
そこから、初めて見るキレイな建物のあたたかいベッドから目が覚めるまでの出来事を、全く思い出せない。分かるのは父の一言と自分の力のなさで、
多くの村民たちは敵兵に命を奪われてしまった事、
そんな皆の亡骸を置いて離れた所へ自分たちは逃げてしまった事、それだけであった。
__暫くして戦争は終わりを迎えた__
アストレアは知った。
感情を抑えられないから、こんな事になる。
いつだって最善の策があったはずなのに、状況をうまく理解できずに、
感情で突っ走ったからこうなったのだと。何よりも力をつけなければならないと。
力を身に着けなければ。大切なのは聞こえるものじゃない、自分の目できちんと見て理解をすることだと。
アストリッド家は今回の戦争でお告げを伝え続けた事から王に認められ、父、母、弟、姉は王国専属の神官となった。アストレアは「それだけはなりたくない」と拒否し、家族と遠く離れる為にウェスベルゲン魔法学園に入学した。安心、友情、愛情、勇気、希望、何もかもが輝いている所だった。
完璧だった。まるで絵本のようにできすぎた場所だった。だが心を病んだアストレアには、ウェスベルゲン魔法学園はあまりにもあたたかくて太陽のようで、眩しすぎた。
そのあたたかさは、村での記憶との激しい差で酷く傷を抉った。まるでこれまでの出来事がなかったかのように過ごしてしまいそうな自分がいたから。
そして「なんて呑気な人たち」とさえ感じてしまった。馴染めなかった。
馴染みたくても、恐ろしくて馴染めなかった。
そんな日々を過ごしていたある日、
母が病を患ったという弟からの手紙がアストレアの所へ届いた。
重い病で、いつ命が消えてしまうかもわからないとの事だった。
アストレアが母の所へ行くにはあまりにも距離が遠く、お見舞いに通う事など不可能。
母の心配と、早く力をつけなければという焦りで手紙を握りしめ読み続けた。
アストレアには迷う選択肢などなかった。
弟は最後にこう綴った。
「姉さんは母様のそばに戻るべきだ、これはお告げだ、天命だ。逆らえない。」
アストレアはまだお告げの言いなりになっている
弟に対して呆れと共に腹立たしく感じた。
だが、弟の言うとおり今は母のそばにいるべきだとは思った。
アストレアは中等部2年の途中でウェスベルゲン魔法学園を退学し、
家族の元へ戻った。
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アストレアがついた頃には
母は幸いにも城の薬剤師のおかげで回復しつつありホッとしたが、
アストレアにとって城はとても居心地の良い場所とはいえぬ所であった。
弟は父をも超える存在になっていた。未だにお告げの言うがままに動きそれを他者へも強要し、姉は言われるがままになり、その周りの者たちも同じように動いていた。
アストレアは村での出来事がここでもまた起きてしまうのではという恐怖心と、
お前も神官になれという圧力で落ち着かなかった。
絶対に神官になんてなりたくない、
その気持ちは断固として譲れなかった。
アストレアは弟と神官たちに伝えた。
「 私は、神官にはなれません。
ご覧の通り神のお告げを受け止めきれなかった罰として火傷を覆ったのです。
私は穢になりえます。ですが私もアストリッド家の娘。
よって、知恵と魔法鍛錬をし、この力を役立てて償って行く所存です。 」
弟は不満気に
「姉さんは折角能力があるのに使おうとしない。理解ができないよ、
能力をゴミにする天才だな」
と呟いたが他の神官たちは哀れみの目を向けていた。
アストレアは両親と相談し、実力主義で厳格と有名なグレンデルオーゼ魔法学園ならば、自分を高められると思い、入学試験を受ける事を決意した。
入学できたものの、アストレアは上下関係というものに疎く、入学してすぐはその暗黙のルールを理解が出来ずにいた。そこを2人の上級生に目をつけられ、過度な"指導"を受けた。この出来事から1年後アストレアは別人のような振る舞いをするようになった。まるで違う人間のように。
(ウェスベルゲン魔法学園を途中退学し、グレンデルオーゼ魔法学園へ入学するといった設定は運営様に確認済みです。)