海香薄暗い部屋に、ひとり。体に羽織っている、この女物の服は一体誰のものなのだろうか。やたら大きくて、しかし懐かしいような、悲しいような。
と、すぐ近くで声がした。遊ぼうよ、今日はおやつを持ってきたんだとはしゃぐ、小さな子供の声だ。
立ち上がろうとしても、足が石になったかのように動かない。待ってくれと叫ぶが、そのうちに声は遠のいて消えてしまった。
しんと部屋が静まりかえる。だが次の瞬間、人々の声が怒涛のように押し寄せてきた。
妾の子の分際で! 誰が住まわせてやっていると思っているの。
待ってくれギルモア! 俺の話を聞いてくれ!
オメガ性機能不全症ですね。残念ながら番を作ることは難しいかと。
大統領よりさらに上、となると王……いえ、皇帝でしょうか?
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