「水心子」
耳元で源清麿に呼ばれ水心子正秀は我を取り戻した。
「駄目だよ。集中してしまうのも分かるけど、もっと全体を見ないと」
「あ……あぁ。すまない」
「爪先をね、とんとんってしてた。ずっと」
「えっ」
「いつの間にヒトみたいな癖を身につけちゃって」
無意識とはかくも恐ろしい。足元で再現までされて水心子は嘆息する。
古物オークションに忍び込むには外見年齢があまりにも若すぎて、23世紀から持ち込んだ[[rb:光学迷彩 > ホログラフィ]]を用いて初老の人間の男の姿へと変じていたが、清麿が目尻にからかうような感情を浮かべたのは分かった。
売り言葉に買い言葉、というわけでもないが水心子もつい煽るような言葉を選んでしまう。
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