「チワッス蝙蝠運送でーす」
夜間配達専門をしている吸血鬼の運送屋が、いきなり窓辺に現れた。ドラ公と共同生活をし始めて早30年近く経つが、未だに玄関からでなくこうやって窓から入り出す吸血鬼は数多くその対応に慣れてしまった自分も大概だなぁとしみじみと思った。
「はいよ、ご苦労さん」
ポンっとハンコを押して飛び去る運送屋吸血鬼に手を振った、渡された荷物はドラルク宛で送られて来た先がどうも海外からの様だ。
「ロナルドくん誰か来たのかい?」
気配を感じたのか、隣の部屋で料理をしていたドラ公が顔を出した。
「ああ、宅急便。お前宛だけど誰からなんだ?」
「なんと、やっと来たんだね!!待ち侘びていたよっ」
パッと明るい表情を見せるドラ公は荷物を受け取ろうと手を伸ばすが、俺はそれを阻止して頭上高くに荷物を持ち上げた。
「ちょっと何するんだいっいじわるしないで渡しなさいっ」
背伸びをして荷物を奪い取ろうとする必死なドラ公の隙だらけの両脇に、すかさず腕を回して抱きしめてやる。
「ちょっとロナルドくんっ」
「荷物の中身なんだよ?俺に言えない物なんかよ?」
ムッとした顔で問い詰めると、最初キョトンとした顔を見せていたドラ公がすぐ様意地悪そうなニヤリ顔を見せて来た。
「見たい?」
「おう、見せろや」
「じゃあ、私を離すかソコに座るかして」
離す気などさらさらないので、指定されたソファに座りドラ公を俺の膝の上に乗せた。ドラ公は鼻歌まじりにご機嫌で包装紙を破り中身を取り出して見せた。
「じゃーん!!すごいでしょう!昔馴染みの職人さんに頼んで作ってもらったんだ」
ドラ公が見せてくれたのは写真などを入れて飾る写真立てだ、その額縁には俺には理解はできないが複雑な彫刻がされているのだけはわかった。
しかし、解せぬ事が一つだけ…その写真立てに飾られていたのは写真ではなく、俺の『国宝級』と派手に書かれたパンツだったからだ。
「ドラ公っこれは一体何なんだよっ!?」
「ロナルドくんの国宝級パンツ」
「見りゃ解るわっ!!何でそんなもんこんなゴテゴテ装飾額縁ん中に飾るんだよっ!!」
「そりゃあ記念に決まってるじゃないか」
ドラ公はニコニコしながら話を続ける。
「この国宝級パンツはね、選び抜かれた戦士なんだよ」
「戦士?」
「君はこのシンヨコで退治人をする限りおポンチ吸血鬼と戦い抜いた訳だ、その最中で君と共に戦い抜いた国宝級パンツの中で唯一生き延びた国宝級パンツはこのこだけなんだよっ」
「いや、そんな真面目な顔で言われても…」
ドラ公曰く、俺の国宝級パンツは何枚かあった。シンヨコの吸血鬼退治の最中にオシャカになったパンツは数知れず、唯一残った1着が額縁に飾られた国宝級パンツなのだと言う。
「たくっいつの間にかないから捨てたのかと思ってたけど、まさか額縁に飾られるとはなぁ」
「嫌だったかい?」
首を傾げながら見上げる姿は俺好みをわかっていての仕草だ、そうすれば大抵の事は許されると思っているからだ。
「んじゃ、俺がドラ公のパンツ飾っても文句ないよなっ」
「はぁっ!?」
ドラ公のすっとんきょうな声を上を聞いて、ニンマリと笑ってやった。
「お前が俺のパンツ飾るなら、俺にもお前のパンツ飾る権利があるよな?」
「ないないないっうそうそっ待って!?」
「はい、決定っ!!」
「ミーーーッ」
後悔してももう遅い、俺はイソイソとドラ公のパンツコレクションを物色するのだった。