Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    nokibi_aki

    @nokibi_aki

    真桐。エロ・連載SS置き場。

    修正はしてますが、®️18ですので、お気を付け下さい。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 🍌 🙏 😍
    POIPOI 1074

    nokibi_aki

    ☆quiet follow

    夏のお題ss
    若真桐

    ごちそうさま  呼ぶ さくらんぼ

    #真桐
    Makiri

    4##4


    「冷たいもん食いに行こうや」

     と、誘われたジメジメした夜。
    日が落ちてもやはり蒸し暑い。そんな日に飯に誘われた。
    珍しく喧嘩はええわと言われたのにはびっくりしてしまった。さすがの真島も、まとわりつくような暑さにはバテているのだろうか。確かに、体温は低いし、汗をあまりかかない男だから、体温調節が苦手なのかもしれない。
    なんとなしに体温や汗を知っている事が恥ずかしくなり、男の視線から逃れるように空の器に視線を落とした。
    真島に連れて来られたのは年季の入った立て看板が味を出している中華そば屋だった。夫婦でやっている店は広くは無いし、椅子だって古めかしく所々破けている。何ヶ月も前の雑誌や、自分が知らないような古い漫画が歯抜けに並んでいる小さな本棚。真島に連れられるのだから想像も出来なかったぶん、少し安心した。馬鹿のように高い店にも連れられた事もある。ドレスコードがあると言うウエイターに「俺はかまへんねん」とズカズカ店内に入るような人だ。古いくらいが丁度いいし、自分もまた、この雰囲気が嫌いでは無かった。

    「久しぶりじゃないのさ、真島ちゃん!」

     そう声を掛けてくれた婦人は熱いおしぼりと冷たい水をふたつ持ってきてくれた。その言い方に、真島がこの店の馴染みだと言う事が解る。「あの熊みたいな子以外で来るなんて、珍しい」熊みたい。と言うのはきっと真島の兄弟の事なんだろうと思った。深くは聞いたことは無いが、ちらりと酒のあてに語ってくれた事が有る。

    「そらそうや、この子は俺の気に入りやねん」

     〝特別な関係〟が有るだとか言われた訳じゃ無いのに、酷く恥ずかしい気持ちになった。お気に入り。そう言われただけなのに、勘繰られたらどうしようと変に意識してしまう。気にしているのは自分だけのようで、じっさい婦人は「そうかい」と笑っていた。

    「冷麺大盛2人前な、あと餃子!」

     真島が頼んだのは美味しい組み合わせ。
    その上ビールなんか頼まれた日にはこのうざったい湿度も忘れてしまえるだろう。

    (餃子…)

     ふと思ってしまったのは、もしも、もしもだ。この後〝誘われ〟たら。とほんの僅か考えてしまったからだ。真島に抱かれる事を覚えてしまった自分は、つい考えてしまった。キス。深いキスをしたとき、餃子の匂いなんかがしたら気分が乗らなくなるのでは、と。自分では無く、真島が。そう考えて、まるで女にでもなった気がして自分が少し嫌になる。

    (この人のせいだ)

    (この人が)

     優しく名前を呼ぶから。優しく触れるから。自分を抱く時と喧嘩の時にしか、汗をかいたり、息を乱したりしないから。思考が変な方向に行ってしまいそうで、早く飯が来たらいいのに!と餃子の焼かれる音を待ち遠しく思った。


    ーーーーーーーーー

    「桐生ちゃんさくらんぼ好きなん?」

     ごちそうさま。と箸を置いた時、言われた。

    「何でですか」

     聞けば、大事そうに最後まで取ってたやんかと返され、しまった。と思う。メロンソーダのさくらんぼしかり、ホットケーキに乗るさくらんぼしかり、確かに最後に取っておいてしまう。一つしかない蔕付きのさくらんぼ。

    「…まぁ、嫌いじゃないです」

     好きだとは言えなかった。お子さまだと言われそうで。
    しかし、真島はそれを聞いた瞬間甘い笑みを浮かべた。

    「舎弟からさくらんぼ貰てな。実家が農家やっとるねんて」

     家に冷やしてあるねんけど。と言われ、どきりとした。さくらんぼにも確かに引かれたが、どうにも真島に誘われると〝そっち〟を想像してしまう。きっと他意はないのだろうと思う。自分がさくらんぼを好きだと言ったから、たまたま家にさくらんぼがあるから。それだけ。
    しかし、妙に意識してしまうのは仕方がない事だと思う。自分はまだ若いのだから。そんな自分に色々な事を教えたのだから。真島のせいだ。と内心で思う。

    「兄さんの家まで歩いたら、汗だくになります」

     風呂、貸してください
    言ったのは、こちらも他意は無い。汗をかいたら気持ちが悪いから。飯を食った後は歯を磨きたいから。それなのに、目の前の男の目線は何故がとても意地が悪いものに変わった。

    「風呂でもベッドでも、いくらでも貸したるで」

       



      悔しい。  悔しい。

     自分ばかり頭の中でぐるぐるぐるぐる、考えている。
    自分ばかりこの男のことを考えてしまっている。ぎゅ、と古めかしい机の上で拳を握った。







    「じつはな、さくらんぼ、自分で買ってん」

    「え?」

    「なんとか、家に呼べへんかなと思ってな」

     カッコ悪いやろ、俺、お前の事で頭いっぱいやねん。



    Tap to full screen .Repost is prohibited
    🍒😍🍒🍒🍒🙏😍💘💘😍😍💘😍🙏💖💖🇱🇴🇻🇪🙏🙏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works