「自惚れてもいいですか?」「聞いて?」
沖田はいつの間にか斎藤のすぐ側に来ていた。斎藤が物言わずただ息を吸うに留まったのは、沖田が今まさに口を開いて何かを言いかけたからだった。
「あなたの事が好きです」
人好きのする笑顔で、子供のような瑞々しい唇が斎藤に告げたのは、今時にしては真っ直ぐな好意の言葉だった。
そのまま沖田の腕がゆっくりと斎藤の肩口をすべり、己よりも一回り大きな背中を抱きしめれば、困ったのは告白を受けた斎藤の方だった。同性に愛を告げられ、更に懐に入り込まれているのにも関わらず、全く嫌悪感が湧いてこないのだ。
首筋にかかる柔らかい毛先や頬の温もりひとつ、何も嫌なことがない。まるで幼児を胸に抱いているような、そんな清廉とした思いがそこにあった。
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