『恋人との記憶・想いを消す薬』を飲んだ夢主の話「…っ、あった……」
声が、震える。
視界が、揺れる。
ドッドッと心臓の音が大きくなる中、落ち着けと自分に言い聞かせて無造作に置かれた小瓶に指の先で触れた。
君と二度目の恋
時間は朝10時になろうかという頃合。並んでいる店達はようやく開店準備に差し掛かっていた。この場所は江戸の中でも郊外に当たる場所だ。大通りのように朝から活気づく通りとはまるきり様相が違ってこの通りには静寂が満ちているのが妙に不気味に思えた。
(噂の場所は……)
「………ここ…かな……」
木造の建物の中に一軒だけ、外壁に緑の蔦が鬱蒼と張ってある店がある。窓から覗く無数の瓶や見たこともない装丁の本からも何となく怪しげな印象を与える。
(単なる噂かもしれない…)
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