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    Hazime_xx

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    Hazime_xx

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    X(Twitter)でネタとして呟いたものの導入を書きました。いつか瀬戸が常々書いている11人全員書きます。絶対に。ということで銀時だけ少しだけ掲載します。

    『恋人との記憶・想いを消す薬』を飲んだ夢主の話「…っ、あった……」

    声が、震える。
    視界が、揺れる。

    ドッドッと心臓の音が大きくなる中、落ち着けと自分に言い聞かせて無造作に置かれた小瓶に指の先で触れた。



    君と二度目の恋



    時間は朝10時になろうかという頃合。並んでいる店達はようやく開店準備に差し掛かっていた。この場所は江戸の中でも郊外に当たる場所だ。大通りのように朝から活気づく通りとはまるきり様相が違ってこの通りには静寂が満ちているのが妙に不気味に思えた。

    (噂の場所は……)

    「………ここ…かな……」

    木造の建物の中に一軒だけ、外壁に緑の蔦が鬱蒼と張ってある店がある。窓から覗く無数の瓶や見たこともない装丁の本からも何となく怪しげな印象を与える。

    (単なる噂かもしれない…)

    ***は今日、とある薬を買いに、ここに来た。薬、と言っても怪我や病に効くものではない。***は至って健康体である。

    単なる木でできた引き戸だというのに、店の出入り口を司るドアはやけに重厚に見える。手をかけたその時にギィと鳴った音がまるで泣き声のように聞こえて***は目を伏せた。店内は外から見た通りと言ったところか、地球外から持ち出されたであろう植物や、得体の知れない薬品が所狭しと並ぶ店内から***は必死に目当てのものを探した。されど辺りを色々と探ってはみたが一向にそれが見つけられる気配はない。やはり無駄足だったのかもしれない。

    溜息をこぼして踵を返そうとしたところだった。
    ふと、それの存在に気付いたのは。

    惚れ薬と大々的に書かれた薬の、何個か隣。ひっそり置かれたその小瓶はあまり売れてはいないのだろう。後ろに何個も同じ物が並んでいた。

    『愛しい人を忘れる薬』

    これを飲むとたちまち、服用者は今抱いている恋心を完全に失い、相手との記憶を綺麗さっぱり無くしてしまうのだという。はっきり言って胡散臭い。

    曰く、愛人を作ってきた浮気癖のある恋人に飲ませる。
    曰く、ストーカー行為をしてくる相手に飲ませる。

    使い方は様々だ。しかしながらいくらインターネットの海を探そうが効果については触れられておらずやはりその信憑性は薄い。それも当然か、そもそもこの薬は辺鄙な場所に店を構えるこの薬局でしか販売されていないのだから。
    それでも***はそれまで散々頭を抱えてきた悩みに当てられた解決の兆しに大いに動転した。そんな選択肢があったのかと。

    この薬に出会ったのは、きっと彼と距離を置くための最後のチャンスなのだと思った。彼に好きになってもらって、自分も好きになって。大切な人が当たり前のように傍にいる日常は、想像したよりずっと幸せで、放し難いものだったけれど、この幸せをずっと抱えてはいけないだろうという危機感も***の中に確かにあった。

    私は、彼に見合ってない。
    いつか必ず見限られる日が来る。

    己の胸で囁いた言葉は呪いのように***の中にあって、もしこのままずっと彼の傍にいて、優しさに甘えて。のちのち何かとんでもない目に合うのではないかと思うと怖かった。いつか失うくらいなら、初めから持っていない方がいい。もう十分幸せを感じたから、ここで終わりにして、あとはひっそりと彼の目の届かないところで生きていけばいい。

    (そうすれば少なくとも傷つかずに済む)

    何にも脅かされることのないその場所はある意味で安寧の地とも言えた。ただ突き付けられる現実に抗うことはせず己の心の中だけで解決する方がよっぽど幸せになれるような気がした。

    「……その為に、ここに来たんだから……」

    ***は薬を買った。何の変哲もない透明な液体の入った瓶だ。購入する際、カウンターにいた店主──人の形をした、けれど明らかに地球人の肌色をしていない天人らしき女性の瞳には悲哀にも似た色が浮かんでいた。
    小さな紙袋を抱えて帰路に着く。その間の記憶は曖昧だ。気付いたら自宅の居間の机の上に薬を置いて、気を失ったように正座していた。

    改めて説明書きを読む。この薬には解毒薬がない。飲んだら本当に後戻りは出来ないのだと、大きな赤字で目立つように書かれていた。

    (これを飲んだらもう元には戻れない……)

    決断したのは自分だと言うのに唇がわなわなと震えた。
    最後にもう一度ひと目でも彼の姿を見れたらとも思ったが、やめた。自ら決意を揺るがしてしまうこともないだろう。

    この決断を選んだのは己だというのに、彼との温かい記憶が薬を飲む行為を躊躇わせる。気付けば頬には涙が零れ落ちていた。

    次に会う時は、他人だ。
    手を繋いだ温もりも、笑いあった思い出も、名前を呼んでもらえる喜びも、もうそんな甘やかな日々は戻ってこない。記憶からも無くなる。それでも彼に迷惑をかける自分の存在が耐えきれなかった。

    蓋を開ける。

    「……今までありがとう……」

    それと、さよなら。
    大好きな人──。

    ***の喉が上下する。
    視界を明るい何かが包んで、その光は次第にぼやけていった。目を瞑ると瞼の裏に眩しさだけが残る。

    暗闇と、小さな残光。
    それを最後に、***の記憶は真っ白になった。


    ─────────────────────


    坂田銀時の場合


    何事もなく平穏な時間が過ぎていた。おかげで今日は朝から家出した猫を探せだの騒ぐ珍客や、家賃をむしり取りに来るバアさんの相手をするくらいで、昼過ぎにはすっかり時間を持て余していた。新八と神楽も退屈が過ぎるのか今しがた出掛けてしまい、今は完全にひとりきりだ。それもあって机の前に張り付きすぎて肩が凝ってしまった。うーんと唸りながら両腕を上げて体を伸ばす。いつもはこんな自由な時間があれば大いに満喫するというのに、こんなにも気持ちが上がらないのは恐らく恋人との関係が上手くいっていないからだ。

    「***は……」

    (……最近、連絡寄越さねえな……)

    手持ち無沙汰に読んでいたジャンプの内容もろくに頭に入らずパタンと閉じる。

    ***と『恋人』と呼べる関係になってから約一年。
    彼女と過ごす日々は今までの人生で感じたことのない温かいものだった。初めて自分のことを全部許してくれる人間だった。
    叱って、そして許して、頭を撫でて自分を甘えさせてくれる人間だった。

    初めて口付けをしたとき。
    ***はぽかんとした後、真っ赤な顔で銀時の頬を叩いた。怒っていたけど、それはキスされたことの嫌悪感ではなくて、急でびっくりしてどうしたらいいか分からないからだったようで。

    ありゃあ嬉しかったなぁ。
    気持ち悪い、なんて言って汚物みたいな目で見られたら立ち直れなかったかもしれない。

    初めてベッドに沈めた日は逆だった。
    妙に静かで、顔は赤いけどどこか不安そうで。なにがそんなに不安なのか聞いてみたら、予想外の答えが返ってきた。

    「嫌われたら……どうしようって…思って」

    そんなわけねえのに。
    最初にこの関係に持っていったのは俺の方だってのに。

    ***は自分の体を見て失望する銀時を想像して怯えていた。

    可愛い奴。真っ赤な顔で、困ったように悲しむように眉をひそめて俯く彼女を力いっぱい抱きしめた。
    これが他人を愛おしく思う感情なんだ。

    ***がどうしようもなく愛おしい。

    「ありがとな、***」

    こんな俺を愛してくれて。

    年甲斐もなくちょっと泣きそうになった。
    まるで素直じゃない銀時から始めた恋は、いつの間にか確かに二人だけの物になっていて、***が忙しいと言ってあまり連絡を寄越さなくなった今でさえ、こんなにも彼の心は***を求めて愛おしいと叫んでる。

    それにしても最近、以前より***は連絡を寄越さなくなった。元来遠慮がちな性格だ。だからなるべく我慢させないようにと気を付けていたのに。たまに万事屋に顔は出すもののいつも***の隣は神楽と新八に取られてしまう。

    (神楽は***に懐いてるし、新八ももう一人の姉貴みてえに慕い始めてるしよ……)

    ここであの二人があっさり手放してくれれば自分だって***に付け入る隙があるのに、わりとあの二人の中では面子が揃っているならそのメンバーで出かけて当然といった考えがある。勿論***の中にも。

    「ちくしょー。俺の彼女だってのによ」






    続きはいつかpixivで!!!!!!!



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