それぞれの伝え方年の瀬の朝。乱歩は染みるような寒さで起きた。寝る前に布団に入れて貰った湯たんぽはすっかり冷たくなっていて、厳しい冬の朝に抗う術を持ち合わせていない乱歩はそろそろと布団から這い出て冷えた体を暖めてくれるこたつに早足で向かった。
どうしてこんなに寒くなるの、早く暖かくなればいいのに!と大きな独り言を言いながらこたつのある居間の襖を開けた。
何時もなら朝が弱い乱歩が自ら起きてきたことに驚くであろう福沢は手元の作業に集中していて、乱歩の方を見遣ったもののおはようと声を掛けるだけですぐに手元に視線を移してしまった。
それが気に食わなかった乱歩はこたつで作業をする福沢とこたつの間に、まるで猫のようにするりと入るとくだらない作業をやめさせようと福沢の手から1枚のハガキを奪い取った。
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