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    r103123

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    r103123

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    香炉if忘羨。関係を持ってしまった藍湛に片想いする魏嬰。

    0123「藍湛、」
     筆が落ちて、強い光と目が合う。この薄い瞳に見つめられてしまったらもう駄目だ。動けなくなる。気付けば天井と此奴の顔しか見えなくなって、唇が重なる。
     藍忘機の口付けは力強くて執拗いくらいに長い。口の中がぐちゃぐちゃになって唇がふやける頃になって漸く解放される。
     唇と唇の間で糸を引く唾液が涼し気な表情と酷く不釣り合いだった。乱れて顔にかかった髪を耳にかけてやり、白いままなのに熱い頬を撫でる。
    「魏嬰……」
     お互いの熱を持った場所を布越しに押し当てながら、袷を開く手を受け入れた。
     こんな触れ合いはもう何度目になるのだろう。

     *

    「誰かさんの所為で今日も書き写しが進まなかったな」
     破られた下衣を適当に放り、藍忘機が用意した新しいものを手に取る。俺が腰を気遣いながら立ち上がるのを見守る此奴の腕は、支えるべきか手を出していいのかを迷うように宙をさ迷っていた。
     あやふやでどっちつかずの様はまるで俺達の関係みたいだ。身体ばかり重ねて、なのに相手が何を考えているのかはさっぱり分からない。
    「……ぅお!」
     支えやすいように、よろけた振りをして身体を傾ける。少し態とらしかったかと後悔するより早く、無様に床に肘をぶつける。
    「いっ……て」
     一人で床に転がった俺を、腕を伸ばさなかった藍忘機がどんな顔で見下ろしているのか。知るのが恐ろしくて顔を上げられない。痛みがじわじわと広がっている。
    「大丈夫か」
     痛むのは肘か……心か。
    「あぁ。大したことな、い」
     腕を引かれて無理矢理顔を上げさせられる。目が、合う。
    「ん」
     呼吸を奪う力強い口吸いが今はこんなにも嬉しい。口内を荒らされ、痺れるほど舌を吸われる。ねっとりと下唇を甘噛みされ、静かに見つめ合う。

     皺の一つもなかった襟を掴んでいた手に藍忘機が触れる。そうしてゆっくりと指を外され、触れていた身体が離れる。
    「書き写しは明日やりなさい」
     触れていた場所が急速に冷えていく。此方に背を向けた藍忘機が遠くに見えた。伸ばしかけた手が音もなく床に落ち、拳を握り締める。

    「……こういうのはさ、もう止めにしないか?」
    「魏嬰?」

    「ちょっと厠」
     言い出したのは自分なのに藍忘機がなんと答えるのかが怖かった。立ち上がり、よろけながらも勢いよく蔵書閣から飛び出す。
    「───っ、」
     たった一枚戸を隔てただけの外は真っ暗だった。爽やかな風が頬を撫でる心地よい夜だ。雲深不知処の夜はいつだって静かで、人の気配も周囲にはない。よく晴れた星空を見上げて一人息を吐き、戸に寄りかかる。
    「俺だけがこんなに好きで、馬鹿みたいだ」
     汗みずくになって覆い被さる姿を、必死に唇を押し付ける顔を見て漸く気付いた気持ちは、生まれたと同時に死んでいった。好かれているなんて露ほども思えない。なのに、覚えたての行為に溺れているだけの無垢な男の手を拒めない。なんて愚かなのだろう。
     小さく鼻を啜って俯き、唇を噛む。今だけだ。今だけ少し落ち込んで、それでこの部屋に戻ったら今まで通りに戻ろう。あの行為を取り上げれば藍湛だって元通りに戻る筈だ。

    「おっ、ぁ?」
     寄りかかっていた戸が開き、物凄い力で腕を掴まれる。中に引き摺り込まれて後ろ向きに倒れそうになった身体は温かな身体に抱き留められた。魏無羨の平たい胸の前に回った腕に力が篭もる。
    「いきなり引っ張るなよ! 危な、い……っん! ぅ」
     顎を掴んで無理やり振り向かされ、呼吸を奪うように唇を塞がれる。肩を叩き、唇に思い切り歯を立てて無理やり顔を離す。
    「さっき止めようって言っただろ!」
     唇についた赤い血が痛々しい。俺を見つめる藍忘機は相変わらずの無表情で、俺の癇癪にすら何も思っていないようだった。
     どうにもならない感情が湧き上がって胸を黒く塗り潰していく。お綺麗な袷に手をかけ胸倉を掴む。
    「なんで何も言わないんだよ!! あぁいいさ、それなら俺が言ってやるよ。お前は初めての房事に嵌ってるだけなんだよ。相手なんて誰だっていい。なら俺じゃなくたっていいだろ? 俺は、俺はお前なんて───」
     言いかけた言葉を奪うように唇が重なる。思い切り胸を叩き、髪を引っ張り、指にかかった額の抹額を床に投げ捨ててやったところで漸く解放される。
     抹額は解け、髪がめちゃくちゃになって唇は切れている。普段誰よりも身だしなみに気を使うくせに、何故かそれには構わず魏無羨の肩を掴み真っ直ぐに見つめてくる。
    「君だけではない」
    「なにが、」
    「私も、同じだ」
    「同じって……」

    「『こんなに好き』なのは君だけではない。私、私も」
    「痛っ」
     掴まれた肩が嫌な音を立てる。骨を握り潰そうとするかのような藍忘機の握力に顔が歪む。
    「君が好きだ」
    「っ、今更そんな、そんなことお前一度も」
     肩を離して欲しいし、今更そんな目で見ないで欲しい。縋るように見つめられると何も言えなくなってしまう。あぁ、この瞳が悪い。
     抱き締められて、いつもの藍湛の香りに包まれる。早鐘を打つ胸の音を聞くと悔しいと思いながらも腕を回してしまう。

     恋なんてしたくなかった。たった一言で絆されて、胸が満たされて、嬉しくなってしまうなんて。
    「まっ、毎日!」
    「?」
    「毎日好きって言わないと許さないからな」

    「うん」
     少しだけ身体を離し、さっき乱してしまった髪を手櫛で整えてやる。口吸いを強請って一生懸命に見つめてくる顔が可愛い。唇の先を指でつついてから頬に口付けたら、背骨を折られるかと思うくらい抱き締められる。
    「魏嬰、好き。君も言って」
    「ハハハハハハ。俺も、」
     開きかけた唇を唇で塞がれ、ムッとしながら白い頬を掴む。
    「……まだ言ってない」
    「君を前にして、我慢などできた試しがない」
     羞恥を堪えるように言う藍忘機はやっぱり可愛くて、滑らかな頬を捏ねて笑うとまた口付けられた。
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