きみは花言葉なんて知らない 初めてそれをもらったのは、最初の夏が終わる頃だった。おそらく花屋に行って、この予算で作ってください、なんて頼んだのだろうその花束は、よく言えば無難、悪く言えばありきたりで、彼らしさは微塵も感じられなかった。
「きみなあ、こういったものを持ってくるなら、きみが選んでくれよ」
文句を言いながら受け取ったそれは、ぼくの家の玄関をしばらく彩った。
次にそれをもらったのは、季節は巡って春、桜の花芽がほころび始めた頃だった。
「あんなふうに言ったから、きみからはもう二度ともらえないんじゃあないかと思ってた」
今思えば、ぼくも相当動揺していたのだろう。ついこぼれ落ちた言葉に、花束を抱えた康一くんはあの大きな目をさらに大きく見開いて驚いていた。
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