Just another day 大井路の十九番目の路地には近づくな。洛軍が城塞に来て配達の仕事を受けるようになると、龍捲風はそう一言だけ忠告した。この時はまだ洛軍と龍の間に信頼関係のシの字も無かったので、洛軍もその言葉をなにか黒社会絡みの立ち入り禁止区域とかそういう場所なんだろうとしか思わなかった。
それが洛軍に衣食住が与えられて、さらに仲間と娯楽にまで恵まれるようになった頃、龍はもう一度洛軍に同じ忠告を与えた。
「いいか、大井路の十九番目の路地に配達があっても絶対行くんじゃない。荷物は捨てて無視しろ」
「なにかあるのか?」
「逆だ、何もない。大井路に十九番目の路地は存在しないからだ。だから配達も行かなくていい、それは無い住所だからな」
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