京チョコ1. 保健の魔力?
今日も午前の授業が終わって、クラスの皆もほっこりな給食の時間。いや、5年1組は普段からほっこりじゃないか…。
「次はぁ保健〜保健のじゅぎょぉ〜」
「配膳の邪魔!マリアちゃんお願いっ!」
「舞ちゃん、任せて!マリア、邪魔者、ユルサナイ!」
5時間目が保健の授業だから騒ぐエロエースはいつも通りの変態だけど、いつもの何倍もうるさい。でもエロエースが授業に意欲的なのは珍しいからって、最初は皆許してたんだよね。でもさすがにうるさいし邪魔だから舞ちゃんとマリアちゃんの制裁決定。エロエース、今日も良い飛びっぷりです。
でも、私も正直いつもの体育より全然嬉しい。だって動かなくて良いもん。運動したくないからなあ。
「黒鳥!俺の祈りでこれからの体育を全部保健に変えてやる!」
「黙れインチキ!組の皆で校長に話つけてくるから待っててくれ」
「おおっ!黒鳥と東海寺と麻倉も保健が良いよなっ!」
「仲間が増えて嬉し涙が…ぐすっ」
「ちょっと黒鳥さん!?」
「や、違くて…私は運動が嫌なだけです…」
だからマリアちゃん、ファイティングポーズでこちらを見るのはやめてください…。
私は記憶レス少女だし、好きなことしか考えてないから何にも困ることないんだけど、結構皆は気にしてるみたい。そういう体の成長について。だからなのかエロエロトリオはいつもより元気なんだけど、反対に皆はちょっぴり静か。私の両隣も静かだと思ってたけど、私が運動嫌だって言った瞬間に息を吹き返したように喧嘩し始めた。理由が平和だからね、私。エロエロトリオとは違うもん。
そんなこんなで、ちょっぴりいつもの雰囲気に戻った5年1組の給食の時間は終わり…。
いざ保健の授業だと思ったら、まさかの男女別々の授業!両隣が静かで良い〜。百合ちゃん達はショウくんと離れて残念そうだったけど、エロエロトリオとも離れられて安心したみたい。男女別だからと女子だけ教室を移動したんだけど、移動前はショウくんと離れて悲しいって顔してた子も、着く頃には皆ほっとしたような顔。
で、授業の内容はやっぱりというべきか…第二次性徴について。女の子は大変だねえ…。毎月出血とか、そんな面倒臭いものが本当に来るのかなって、実感できない感じ。で、皆生理がきたら子供産めるようになるってわかった途端、赤ちゃん産めちゃうの?って顔。早い子だと生理が始まってる場合もあるらしくて、恥ずかしいってことよりも赤ちゃんって思ったより身近なんだなって驚いた子の方が多いみたい。
そんなこんなで授業も終わって、皆不思議〜ってまんまで教室に帰った。そしたら男子、しーんとしてて。え?どうしちゃったの?
疑問に思いながら席に着くと、やっぱり両隣が静か。すごい静か。なんならこっち見ないで下向いてる。やっぱり保健の授業の方が良いね。何があったか分からないけど、これはとても良い!
他の女子もドン引きしちゃって、そのまま6時間目になった。男子が静かだから授業が進む進む。ね、舞ちゃん、体育より保健の授業が良いよ。
6時間目と、そのあとの掃除も問題なく終わりました。いつもの授業は脱線して中々進まないんだけど、今日はぐんぐんページが進みました。珍し〜く真面目な5年1組に舞ちゃんは嬉しそう。でも、男子をここまでさせちゃう保健、オカルトdeath…。
下校の時間になってとぼとぼ、とぼとぼ。あれ、大形くんがいるねぇ。
「そうだねぇ、家は隣だから帰り道は同じだねぇ。」
はあ、そうですね…。彼は保健の授業で唯一態度が変わらなかった男子なのですが、普段のうるさい5年1組でも同じなのでなんとなく察してはいましたね…。
「変わるのは思春期だからだねぇ。」
「皆成長したら変わるねぇ。」
はあ…?保健の授業と関わりがあるんでしょうか。まあ、エロエースやその辺りが気まずい空気にしちゃったんじないでしょうか。彼らが黙るって相当だもん。
「違うねぇ。保健の授業で皆それぞれ勝手に自爆したねぇ。」
「黒鳥さんは知らなくてもいいねぇ。」
知る気も無いですけど…。今日はいつにも増して意味不明death…。これ、何かの黒魔法だったりするのかな?そしたら危ないよねぇ。
「ギュービッドさま、いるー?」
まだ1人でぶつぶつとお人形と話す大形くんと別れた私は、ギュービッドさまに相談してみるのでした。
「黒鳥さんも大変だねぇ。」
「そうだねぇ。」
2. 保健の魔力の真実?
「ほっけん保健ーー!!」
小島直樹が歌い、後に続くノリノリな岩田大五郎と大谷早斗のエロエロトリオ。
「黒鳥の護衛には女性も雇った方が良いな。」
「俺と黒鳥は白と黒の霊力で惹かれあってるから、離れても心は繋がってるんだ!」
黒鳥さんがいなくても、通常運転な麻倉良太郎と東海寺阿修羅。
ふふ、いいね。僕が夢の書で見たそのまんまだ。こんなに面白い人たちは魔界にはいないだろう。残念ながら黒鳥さんは僕の妃だから譲れないけど、2人とも黒鳥さんを大事に思ってるから護衛には役立つかもしれない。5年1組の皆は、僕が魔界を支配したら絶対に連れて行く。
「えーでは授業を始めるぞー」
女子は保健の先生が別室に連れて行って、教室に残った男子への授業は松岡先生が担当するようだ。
本日の保健の内容は第二次性徴のようだ。授業なんてどうでもいい。僕は早く魔界を支配したいんだ。そしたら時間はいくらでもあるから、授業は魔界ですればいいさ。
「第二次性徴ではな、背が高くなる他に性の部分も成長するんだ!」
「せんせー!それはおっぱいもですかー!?」
「そうだぞ小島!」
「ウヒョー!楽しみだぜ俺!」
小島直樹はあまりにもオープンが過ぎるが、普段はそういった面で反応しない子の中にもそわそわしている奴がいるようだ。
「僕も大きくなれるかなあ…」
古島真紅は自らの身長を気にしているようだ。松岡先生も彼を思ってか、親切な声をかけている。
「大丈夫だぞ古島!高校生になっても背が伸びた奴はいるぞ!」
「本当ですか…!」
僕は魔力でいじれるけど、彼にとっては大きな問題なようだ。僕が魔界を支配したら、望む身長にしてあげるよ。
「ま、この性徴によってもっと女子は女性らしく、男子は男性らしい体になるんだぞー!六本木のクラブのお姉さんたちも、これによってあんな体のラインに…」
「聞いたかエロエース!じゃあ、中学に入ったらグラビア体系が生で見れるってことか!?」
「ガッツ!体力と筋肉量が増えてもっと動けるようになるな!ガッツ!」
「んがっ?」
クラス内の盛り上がりは最高潮に達したせいで、寝ていた葉月星夜も起きてしまったようだ。
しかし、盛り上がりはすぐに一瞬に冷めてしまった。
「ということは、黒鳥の魔力も増大して魔女の力も上がるのか?」
速水瑛良の一言を皮切りに、皆がクラスの女子の成長した姿を考え始めてしまったのだ。
最初は皆にやにやしていたが、普段一緒に過ごしている女子の大人びた様子を想像して、初心な子たちはすぐに照れてしまったようだ。それはもちろん、麻倉と東海寺もだ。
「黒鳥が艶っぽい極妻に…?」
「黒鳥が大人の黒い魔力に…?」
そう言った途端、耳まで赤くなってしまった2人。前言撤回。魔界には連れて行くが、僕の黒鳥さんの護衛など任せられない。恋心を抱いた状態で彼女の近くに置いては、彼らは何をしでかすかわからない。
速水はどうやら魔女っぽさが増すのではないかと嬉しそうだが、こいつもそばには置けないな。黒鳥さんは本当の黒魔女さんだから、正体がバレたらさらに黒鳥さんに近づこうとするだろう。
「…おお、とりあえず進めるぞ〜」
突然黙り込んでしまった生徒たちに松岡先生は一瞬驚くものの、やはりこのクラスの担任を受け持っているだけある。黙った生徒を放置して授業を進めていった。
その日はもう男子はダンマリだった。女子を視界に入れたら想像してしまうのか、俯いた子ばかりだった。そのまま放課後になり、帰宅していると後ろから黒鳥さんの気配。一緒に帰ってないけど、下校がかぶるのは嬉しいな。
黒鳥さんは男子の態度がおかしかった理由がわからないようだけど、単純だよ。彼らは思春期なんだ。成長していく女子を想像して勝手にドキドキしているだけだ。自分達の将来を勝手に想像されて下心満載なんて、女子にとっては不快だろうから理由は教えないけど。しかも、黒鳥さんの成長した姿を想像したのは2人だけじゃないだろう。速水瑛良の言葉のせいだ。黒鳥さんは変な奴に好かれていて大変だ。僕が守らないと。
皆が想像した黒鳥さんの隣に立つのは僕だから。家の中に入っていく黒鳥さんの姿を見届けて、僕もまた修行のために家の中に入った。