速チョコ席替え
いつもキャーキャーうるさい担任が、いつも通りキャーキャー席替えしたいと言い出した。教科書を読めば全部頭に入るから授業に出席する理由なんてない。が、席替えとなれば話は別だ。一応簡単にできる『隣になれる』おまじないはあるが、どうせならもっと時間をかけた儀式をしたかった。黒鳥の隣になるんだ。俺もそのくらいしてみせないと、肩を並べられないだろ?
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素晴らしく救われないだけの、恋愛話
(診断メーカー「140文字で書くお題ったー」より)
トンデモ異世界の謎パロです
様々な種類の非科学的能力がうずまくこの世界で、俺が好んで研究していたのは黒魔法だった。義務教育の学生時代は秀才と讃えられた俺だったが、黒魔法だけは皆に受け入れられなかった。もちろん他の魔力にも禁忌とされる術はあるものの、黒魔法だけは存在自体が疎まれることが多い。それでも、俺と同じ道を選んだ奴がいた。黒鳥千代子だ。あいつも頭はおかしいが、確かにあいつの体質的には黒魔法が一番向いている。同じ学校出身とあって、魔学院に進んだ後も黒鳥と交流が続いていた。そして、黒鳥と過ごす時間の分だけ黒鳥への想いも募っていった。のに。
「やあ、黒鳥さん。彼がいつも話してくれる速水くんかい?」
黒鳥と魔学院の中庭で談笑していると、やたら装飾の多い白い服を着て、無駄にキラキラさせた奴が声をかけてきた。
「えっ、大形くん、どうしてここに?」
「なんだ黒鳥、知り合いか?」
「初めまして速水くん。僕は大形京、黒鳥さんのフィアンセだよ」
「…は?」
「違うからね速水くん、勝手に言ってるだけだよ」
フィアンセと言った瞬間、こいつは俺のことを憐れむように目を細めて話しかけてきた。黒鳥は否定したが、そうは言っても…なんとなくわかる、こいつは黒魔法に長けていると。俺の読みは当たったらしく、大形が帰った後に話を聞いた。親戚ではあるものの、王室の地を継いでいること、黒鳥の素質に惚れているとほざいていること、など…。
黒鳥の素質に惚れているなんて、黒鳥本人を見ていないじゃないか。黒鳥と別れた後、俺は研究室に残って考えていた。考えることは無論先程のこと。相手は王族、俺も黒鳥も一般家庭。王族がその気になれば黒鳥本人も黒鳥家も婚姻は断れないだろう。でも、王族に向かって黒魔法だけでなく能力自体を使うのは御法度なんだ。だからといって黒鳥に俺を好きになってもらう黒魔法は使いたくない。好きな黒魔法を使って、愛しい人をコントロールするのは嫌なんだ。
手強い恋敵を思い浮かべながら拳を握りしめた俺は、黒鳥への想いをさらに強くしたのだった。
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飲み会
「久々だな、治樹」
「いつぶりだろうな…半年は経ってるな」
今日は小学校からの仲の与那国治樹と久々のサシ飲みだ。もう互いに社会に出て数年経っており、話題は多岐にわたる…が。
「んで、まだ結婚しねーの?」
「まだまだだな。気持ちは早くしたいんだけどな、仕事が」
「なるほどな、早くしたいってのは…やっぱりあの二人か?」
「わかるか!?あいつら本当に懲りないんだよ!」
「変わんねえな、皆」
互いに酔いが回ってくる時間帯、やはり盛り上がるのは恋愛の話で。
知り合ってから十数年経っても変わらない同級に春樹はしみじみとしているようだが、俺としてはその間ずっと心を乱されている。
「ははは!お前も大変だな!乾杯乾杯」
「あ〜も〜さっさと結婚して指輪見せつけるしかねえだろ…」
黒鳥と相思相愛なのは俺なんだと胸を張って主張できる立場になりたい、法的に結ばれたいなんて、常に抱えている思いが酩酊によって表出してしまうのも仕方ねえだろ、だから笑うな治樹!
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そうだったっけ、覚えてないや
(診断メーカー「140文字で書くお題ったー」より)
このまじないが成功したら、俺のことを意識してほしい。
黒鳥の記憶力の無さはわかっていたつもりだったが、ここまでとは…。そんな諦めのようなため息を吐く速水くんを見て、私は少し焦っていた。え?そんな告白めいたこと言われたっけ??というか速水くんのまじない関係、大抵問題が絡んでるからやめて欲しいんだけど…。
「…本当に覚えてないのか?」
「え、うん…ごめんね」
「…いや、いいんだ。今度は覚えててくれよ」
え?諦めてよそこは…。うーん、めんどうくさいdeath…。