泊まっていけば 洗いざらしのくたびれたTシャツも、コイツが着ればヴィンテージの小洒落た杢グレーに見えてしまう。俺の前にいるときは単なるワガママで面倒臭い普通の男な気がしていたけれど、やはり生まれ持ったものが違うのだと、ふとした瞬間に感じるのだ。
隣に腰を下ろし、ぽやぽやと瞬きを繰り返す輪郭を眺める。裸眼の素顔は幼い。おろした横髪にもみあげが隠れると、いよいよ子どものようだと思った。そんなことを言うのはアナタだけですと頬を膨らませるが、それは即ちこの顔を知っているのは俺だけだということだ。甘ったるい事実は胸の内を快く溶かしていく。
長い脚を窮屈そうに腕の中に収めて体育座りのような格好をしているくせに、背筋はぴんと伸びているアンバランスさがおかしい。テレビは何となくつけているものの、きっと内容など全く頭に入っていないのだろう。昼間は理知的に輝いている瞳は、とろりと夜の色を湛えている。首元の少し撓んだ生地の辺りに触れると、柔軟剤の香りがした。
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