witch「良い風」
窓を開け、部屋の中へと風を流し込む。爽やかな空気は、窓を開けた張本人の肺を満たし、眠気をも覚ました。
森の中で一人生活する魔法つかい、浮奇ヴィオレタ。彼は人がいないこの世界でのんびり魔法を使っては自由気ままに過ごしていた。人はいないが、浮奇の瞳によく似たパープルサファイア色のゼリー状の妖精たちが浮奇の周りに集まり、おしゃべりをしたり、ティータイムをしたりと、穏やかな日々を送っていた。
「ゼリーたち、今日は水辺にある石を探しに行くから手伝ってくれる?」
そう言ってドアの横に立てかけておいた箒を取り、外へと連れ立っていく。ゼリーたちは楽しそうに浮奇の後をふよふよと漂っていった。
箒に跨がり、ゆっくりと上昇する。太陽に近くなったことで照らされた浮奇の髪は、宝石のように陽を反射していた。
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