制汗剤 バンッ!と大きな音を立てて、部室のドアが開いた。
「おかえり」
「なんだよ玉川、まだ居たのかよ」
「これでも一応、部長だからね」
練習試合から帰って来た切原が、乱暴にラケットバッグを置いた。
「くっそぉぉぉぉぉーーーー!!!!」
切原の叫びが、部室に響く。意気揚々と高校側のコートに出かけて行った時の顔が、嘘のようだ。辛子色のジャージは汗で一段階濃く染まり、天使化の名残なのだろうか? 瞳に鮮やかな青色が薄く残っている。前レギュラーの先輩達との年の差は一年。たった一年。されど一年。彼らの背中は、卒業後も高くて眩しい。
新年度がスタートして一ヶ月が経過した。そして、いや、やはりと言うべきだが、昨年度からの懸念事項は、見事に現実となってしまった。
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