未だ見ぬ星座 冬の雑踏はくすんだ匂いがする。
夜だった。スマートフォンの画面に表示された時刻は8時52分、空は暗いはずなのに、ひしめく電飾が昼間よりもあたりを明るくする。赤と緑のモールがぐるりと巻かれた街灯、豆電球がトナカイや髭の老人の姿をかたちづくる。
ビルの合間にのぞく月は爪の先めいて細い。星はなくて、飛行機のランプがちかちかと赤く瞬いていた。
風は冷えている。
月島はマフラーに顔をうずめた。宴の余韻がまだ体のあちこちにこびりついている。忘年会とも送別会とも祝勝会ともつかない、そのせいか感情の収めどころがよくわからないままでいる。胸のあたりがすうとして、けれどふしぎにあたたかい。
アルコールと煙草と焼肉とひとの移り香と、鼻先のあたりでいりまじってひとつになる。
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