ゲゲちゃん1
【お疲れ様です。山田です。新作が数点完成いたしましたので、小物のチェック、修正とモデル業務を依頼します。全て合わせて半日程度お時間いただけたらと思います。報酬も前回と同様──】
淡々と綴られた仕事の依頼を携帯端末で確認するようになるとは、自分も随分俗世に慣れたものだなぁ。そんなことを思いながら鬼太郎は端末をちゃぶ台に伏せた。ひがな一日、父親とごろごろ床に転がっていたから窓から見える景色はすっかり夕暮れに染まっている。現在の棲家に定めているのは珍しく高層のマンション、その7階だ。昔から平屋か、良くて二階建てのアパートに住んでいた父子にとって高層から見える景色は未だに物珍しい。住む人間住む人間、その殆ど全てが飛び降りては死んでいる事故物件は令和とは思えぬ程の格安家賃で貸しに出されていたが、鬼太郎たちにとってはなんということもない、ただのサービスのようなものである。飛び降りを誘う幽霊も今では父の茶飲み友達となっている。
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