とおくなってしまったひさしさ僕には歌しか無かった
歌というのもおこがましいただの叫びでしかないそれでも歌っている時だけは生きてるって思えたんだ。
叫んで叫んで叫ぶ限界まで叫んだ後の僕が感じるはずのない痛みのような感覚がどうも心地が良かった
それでも満たされない時につけた増え続ける傷跡...
それは感じることの出来ない痛みを具現化してくれる喜びとまた死に損ねたという悲しみを僕に植え付けた。
ぼーっと手首に巻かれた包帯を眺めてると
「なぁ斬崎あん時の傷もう治ったんか?」
そう話しかけてきた。僕のことなんて興味無いと思ってたから正直びっくりした。
「あん時?あー、ひさ子が初めて僕を抱き上げた日のことか。」
「くそっ、あれは事故だろ。変な言い方すんな」
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