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    2022/10/15 晶くんオンリー「ひかる星々の名前を教えて」展示作品です。
    付き合っているファウ晶♂が甘やかしたりされたりします。パスワードはお品書きにてご確認ください。

    甘やかしたい! 朝食をとるために食堂へ足を向ける。すでに食事を摂り始めている魔法使いたちの中から、食事に夢中になっているであろう可愛い恋人の姿を見つけて、思わず頬が緩む。自分の分のプレートを持ってその隣の席に着くと、晶は口の中のものを飲み込んでから話しかけてきた。
    「おはようございます、ファウスト」
    「おはよう。あまり急いで食べると、喉に詰めるぞ」
     小動物がするように食事を口いっぱいに詰め込んで、おいしそうに咀嚼する姿は可愛らしいが、喉がつまって苦しい思いをするのは可哀想だ。注意をしてやると、晶は素直にうなずいた。
    「はい、気をつけます……」
     言われた通り、ゆっくりと食べ始める晶を見て、僕も食事を始める。今日もネロが丹精こめて作った食事はおいしい。晶がおいしそうに食べるのも納得だ。
     そろそろ晶は食べ終わる頃だろうか。そう思って傍らの彼の顔を見ると、オムレツについていたであろうケチャップが頬についていた。晶はそれに気づかないまま、『ごちそうさま』をして食事を終えようとしている。食事に満足した証を残しているのはいいが、他人にそれを指摘されるのは恥ずかしいだろう。僕は手元にあったナフキンを手に取った。
    「ここ、ケチャップがついている」
     晶は驚いたように目を見張ってから、照れくさそうに視線をそらした。
    「あ、ありがとうございます……」
     拭き終わってから、晶の肩を軽く叩く。
    「今日も任務があるんだろう、気をつけて」
    「はいっ!」
     意気込んだ様子でうなずく晶の頭を撫でる。彼は何事にも一生懸命だ。どうかその努力が報われる一日であるように、と願ったのもあるが、僕の言葉に目を輝かせる彼が愛おしかったのもある。こんな風に僕の言動に笑ってくれる晶を見るのは、悪い気持ちではなかった。
     ここに来てからは、一日が矢のように過ぎていく。授業や任務、その他の用事を済ませていればあっという間に日が暮れる。夕食を済ませて明日の準備をしていると、依頼や任務を終えた魔法使いたちが帰ってきたのか、中庭からにぎやかな声が聞こえた。そっとカーテンを開けると、西の魔法使いたちと賢者が玄関に入っていくところだった。その表情は明るい。
     依頼や任務、そこで出会う人々は必ずしも友好的でないことがある。そういった日は魔法使いも、賢者の顔もうかないが、今日はそうでもなかったらしい。それに安堵してカーテンを閉め、作業の続きに戻る。
     明日の準備や諸々の支度を終えた頃、部屋の扉が小さくノックされた。
    「晶です。遅くにすみません」
     ドアを開けると、寝間着姿の晶が立っていた。恋人という仲になってから、こんな風に夜に彼が訪ねてくるのは珍しいことではない。それでも彼はいつも詫びの一言と共に訪れる。彼らしいと言えばそれまでだが、もっと僕に対しては甘えたっていいと思っている。
    「入りなさい。寝つきのよくなるお茶でも淹れよう」
     晶を招き入れ、さっそくお茶の準備をする。その間、彼は今日あったことや、任務で行った西の国で見た珍しい物などを楽しそうに話していた。
    「こんな夜に押しかけちゃってすみません。でも、どうしてもファウストに話したくて……」
    「構わないよ。きみの話が聴けるのは悪くない」
     お茶を飲んで一息ついた晶は、ゆったりとほほ笑んだ。彼の笑顔を見ていると、僕まで心が温かくなってくる。それが昼間に見せる眩しいくらいの笑顔であっても、今目の前にあるような柔らかな微笑みでも。
    「嬉しいこととか、楽しいことがあるとファウストに話したくなっちゃうんです、どうしてかな……」
    「さあ。でも、僕を相手に選んでくれてありがとう」
     そう言うと、晶はえへへと笑って抱きついてきた。抱きしめ返して髪を撫でてやると、ふふふと笑う息が耳に掛かる。
    「そんなことされると眠くなっちゃいます……」
    「眠いのなら、部屋へ送っていこう」
     しかし、晶はいやいやと首を横に振った。
    「まだ、ファウストと一緒にいたいです」
     そんないじらしいことを言いながらも、本当に眠くなってきたのか、少し声がふわふわしている。
     夢が溢れてしまう僕の傷のせいで共寝はできない。それを、どれほど悔やんだだろう。でも、彼に怖い思いをさせてしまうのは避けなければいけない。
    「じゃあ、もう少しだけ」
     せめて、起きているときだけは共に過ごしたい。そんな僕のわがままを、晶は笑って受け止めてくれた。晶を甘やかしたいと思っているつもりだったが、逆に甘やかされているのは僕の方かもしれない。それでも、どうか少しでも長く、僕がきみの傍にいられるように。
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